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世界の畜産業におけるアニマルウェルフェアの最前線 ~動物たちの生活を改善する最新の取り組み~

世界の畜産業におけるアニマルウェルフェアの最前線 ~動物たちの生活を改善する最新の取り組み~

犬や猫、ウサギなどのいわゆるペットだけでなく、畜産動物へもアニマルウェルフェアという考え方が広まってきています。

畜産におけるアニマルウェルフェアは、
家畜が感受性のある生き物として、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスを少なく健康的に暮らし、本来の生理生体・習性に合った快適な環境下で飼育される事
を目的としていて、前提として、アニマルウェルフェアは動物を家畜として利用することを否定するものではありません。

日本でもこの考え方が広まってきていますが、今回は諸外国を例にそれぞれの畜産のアニマルウェルフェアについてご紹介致します。

なぜ、畜産の世界でアニマルウェルフェアが求められているのか?

アニマルウェルフェアが求められる背景

生産性を重視する集団的畜産では、多くの濃厚飼料(穀物など)を与え、行動を強く制限する施設で家畜を飼育しています。
こうする事で、生産者は安い畜産物を大量に生産することができるようになりました。

しかし、その一方で、家畜は心身の健康や本来の行動様式を奪われてしまっています。

こうした家畜の暮らしを改善するために、今世界的にアニマルウェルフェアが求められています。

アニマルウェルフェアの具体的な取り組み

  • 質の良い飼料や水を与える
  • 換気や温度管理に配慮した飼養スペースを作る
  • 清掃消毒をするなどして、清潔を保つ
  • 家畜に危害を加える有害動物などは駆逐・駆除する

中国でのアニマルウェルフェアの取り組み

国営団体が中心になって動物福祉の基準を作成

中国は動物保護法がないとして批判をされがちですが、実は動物福祉への規制はいくつかあります。

今、世界と同様に中国でも採卵鶏のケージフリーへの移行が進んでいます。

中国国営団体の中国チェーン店フランチャイズ協会CCFAとChina Animal Health and Food Safety Alliance (CAFA) 、経営コンサルティング会社のIQCの3団体は2021年10月に、「ケージフリー」基準を発表。

国営団体が中心になって基準を作成したことで中国全体に「国としてアニマルウェルフェアを前向きに進めている」ということが広まりました。

日本にはまだない動物福祉への取り組み

中国は取り組みの開始からわずか1年余りで50万羽以上の鶏を飼育するケージフリーの産卵鶏農場17カ所が認証をうけ、より多くの産卵鶏が福祉の高いケージフリー環境で飼育することができるようになりました。

さらに2022年にはアニマルウェルフェアの技術に特化した研究をする研究施設、重慶国康動物福祉科学研究所が正式に国からの認可を受けました。

まだ日本には政府が認可した動物福祉の研究施設はありません。

ヨーロッパでのアニマルウェルフェアの取り組み

イギリスをはじめとしたヨーロッパでは持続可能な農業の指標の中核としてアニマルウェルフェアは取り組まれてきました。

動物福祉に関する取り組みは
農業の動物は感覚をもった生き物である
つまり、動物は喜び、楽しみ、痛み、苦痛などを肯定的にも否定的にも感じる能力を有している。

という基本原則に基づいて世界的にも早いスピードで進んでいきました。

ヨーロッパで100%のケージフリーを実現

ヨーロッパでは2009年に、北米では2020年に養鶏場のケージフリーを達成しました。
世界的に見てもイギリスを中心としたヨーロッパでアニマルウェルフェアが進んでいることがわかります。

乳製品、食肉の持続可能で再生可能な調達

ヨーロッパのCaring Dairy プログラムにおいて、もちろん鶏だけでなく牛への苦痛の軽減も基準が作られています。

全ての酪農家は乳牛を放牧することが義務付けられており、若い牛を放牧して牛の寿命が伸びると酪農家は政府から報酬を受けることができます。

アメリカでの法規制による取り組み

政府によるアニマルウェルフェアに関する規制およびプログラム

アメリカの畜産業界では、持続可能な畜産に向けた取り組みにアニマルウェルフェアへの配慮を位置付けていたり、連邦政府が動物への残酷な扱いを禁止する法規制を行うなどの取り組みがされています。

家畜に無用なケガを負わせること、および苦痛を与えることのない家畜の取り扱いの徹底と動物を放置すること、傷付けること、その他の虐待行為に及ぶことを禁止するなど、法規制により人道的な取り扱い基準が定められています。

まとめ

今回は犬や猫、ウサギなどのいわゆるペットだけでなく、畜産動物へもアニマルウェルフェアという考え方が広まってきていることをテーマに、中国やヨーロッパ、アメリカでの取り組みについてご紹介しました。

中国では、採卵鶏のケージフリーへの移行や国から認可を受けた動物福祉科学研究所が動物福祉に関して研究するなどの取り組みがありました。

また、ヨーロッパやアメリカでは、100%ケージフリーの達成や各州における動物福祉に関連する法規制で動物への苦痛などを最小限にするための取り組みがされています。

前提として、アニマルウェルフェアは動物を家畜として利用することを否定するものではありませんが、畜産業界でのアニマルウェルフェアも今後ますます注目していきたいですね。

執筆者:深田龍誠

参考記事

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