動物福祉の国別ランキング|「ペット先進国」はどこ?世界動物保護協会の指数で見る各国と日本の評価

「ペット先進国」「動物愛護先進国」という言葉はよく使われますが、公式な定義やランキングはありません。そこでこのページでは、国際的な動物保護団体の指数を使い、「指標で見るとどの国の評価が高いのか」を整理します。

結論から言うと、国際NGOの世界動物保護協会(World Animal Protection)が50か国を評価した「動物保護指数(Animal Protection Index)」の最新版(2020年版)では、最高評価のAを得た国はなく、上から2番目のBがオーストリア・デンマーク・オランダ・スウェーデン・スイス・イギリスの6か国でした。日本はA〜Gの7段階で下から3番目のEです。

ただし、この指数は「法律と政策」を評価したもので、ペットの暮らしやすさや殺処分の少なさを直接測ったものではありません。

ランキングの出典と見方|動物保護指数とは

動物保護指数(以下API)は、世界動物保護協会が作成している国別の評価です。初版は2014年、現在公開されている最新版は2020年の第2版です(2026年10月時点、公式サイトで確認)。

  • 対象:50か国。国連食糧農業機関(FAO)の統計をもとに、牛肉・豚肉・鶏肉・乳・卵などの生産量が多い国から選ばれています
  • 評価するもの:動物に関する法律と政策
  • 評価の段階:A(最も高い)からG(最も改善の余地が大きい)までの7段階
  • 指標:4つの目標に分かれた10の指標で、それぞれにも A〜G がつきます

10の指標は、次のような内容です。

  • 動物に感受性(痛みや苦しみを感じる能力)があることを法律で認めているか
  • 虐待や、世話をしないことによる苦痛を法律で禁じているか
  • 畜産動物、飼育下の動物、伴侶動物(ペット)、使役・娯楽に使われる動物、実験動物、野生動物、それぞれを守る法律があるか
  • 動物福祉に責任を持つ政府の体制があるか
  • 国際獣疫事務局(OIE、現WOAH)の動物福祉基準を取り入れているか

見るときの注意点は3つあります。

  • 「法律の中身」の評価であり、現場の状態を測ったものではない。法律があっても運用されているかは別の問題です
  • ペットだけの評価ではない。畜産動物や野生動物の扱いも総合評価に入ります
  • 2020年時点の評価である。その後に各国で成立・施行された法改正は反映されていません

評価の高い国|B評価の6か国とC評価の国

API 2020年版の総合評価は、次のように分かれました。

  • A:該当なし
  • B(6か国):オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン、スイス、イギリス
  • C(9か国):フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、ニュージーランド、インド、マレーシア、メキシコ
  • D(16か国):アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国、ブラジル、タイ、フィリピンなど
  • E(10か国):日本、中国、インドネシア、アルゼンチン、南アフリカなど
  • F(7か国)・G(2か国):Gはアゼルバイジャンとイラン

主な国の総合評価と、「感受性の法的承認」「伴侶動物の保護」の2つの指標を表にまとめます。

国 総合 感受性の承認 伴侶動物の保護 2014年版から
オーストリア B B B 下がった
スウェーデン B B B 変わらず
オランダ B B C 変わらず
スイス B C B 下がった
イギリス B C B 下がった
デンマーク B C C 変わらず
ドイツ C C C 下がった
フランス C B D 変わらず
ニュージーランド C B D 下がった
アメリカ D D F 変わらず
韓国 D E D 変わらず
日本 E F D 下がった

(出典:World Animal Protection「Animal Protection Index」2020年版の各国ページ。2026年10月確認)

まず、「ペット先進国」としてよく名前が挙がるドイツはCです。APIは畜産動物なども含めた総合評価のため、ペットの制度だけでは上位に入りません。

次に、B評価の6か国のうち3か国は、2014年版から評価が下がっています。2020年版では、無脊椎動物の一部にも感受性があるという研究を踏まえるなど、採点の基準そのものが厳しくなりました。評価の低下は、法律の後退とは限りません。

また、イギリスの「感受性の承認」はCですが、イギリスでは2022年に動物の感受性を法律で認める「Animal Welfare (Sentience) Act 2022」が成立しています。2020年版の評価には、こうしたその後の動きが入っていないことがわかります。

日本の評価はE|何が低く評価されたのか

日本はAPI 2020年版で総合E、2014年版から評価が下がったとされています。10の指標の評価は次のとおりです。

  • 感受性の法的承認:F
  • 虐待を禁じる法律:D
  • 畜産動物の保護:G
  • 飼育下の動物の保護:D
  • 伴侶動物の保護:D
  • 使役・娯楽に使われる動物の保護:G
  • 実験動物の保護:E
  • 野生動物の福祉:E
  • 政府の責任体制:F
  • 国際的な動物福祉基準の導入:F

日本のページで指摘されている主な点は、次のとおりです。

  • 動物愛護管理法は動物が「命あるもの」であることや痛み・苦痛に触れているが、感受性を正式に認める規定にはなっていない
  • 罰則の対象が犬・猫・牛・馬などの「愛護動物」と、人が飼っている哺乳類・鳥類・爬虫類に限られ、野生動物への虐待には及ばない
  • 飼い主の義務(適切な飼養や給餌・給水など)は定められているが、中身が具体的でない
  • 豚や鶏の飼育、家畜の輸送について個別の法律や政策がなく、国の基準にも検査や罰則の仕組みがない

なお、日本のページは2014年時点の法律をもとにしており、2019年の動物愛護管理法改正(繁殖業者の数値規制、8週齢規制、マイクロチップの装着義務化など)は評価に入っていません。ペットに関する部分は、2020年版の評価より前進している可能性があります。

一方で、畜産動物や使役動物の評価がGであることは、ペットの制度が整っても総合評価が上がりにくい理由になっています。「動物に優しい国」かどうかは、ペット以外の動物をどう扱うかでも測られる、というのがAPIの考え方です。

もう一つの指標|畜産に注目した動物虐待指数

オーストラリアの団体Voicelessは、APIと同じ50か国を対象に「動物虐待指数(Voiceless Animal Cruelty Index、VACI)」を公表しています。2017年に初版、最新版は2020年版です。

VACIは法律だけでなく、1人あたりの畜産動物のと畜数や、動物性たんぱく質の消費量など「結果」に近い数字も使います。そのため、順位はAPIとかなり違います。

  • 2020年版で最も評価が高かった(虐待が少ない)のは、インド、タンザニア、ケニア
  • 最も低かったのは、アメリカ、オーストラリア、ベラルーシ
  • 日本は50か国中24位、評価はD

APIでB評価のオランダが、VACIでは36位とされている例もあります。何を測るかで「先進国」の顔ぶれは変わるということです。

「殺処分が多い国」ランキングはつくれるのか

「殺処分が多い国」「殺処分ゼロの国」を比べたいという検索も多いのですが、各国の殺処分数を同じ基準で比べた国際統計はありません。理由は主に3つです。

  • 集計する主体が違う:日本は国(環境省)が自治体の数字をまとめていますが、民間の保護団体が施設の多くを担う国では、全国の公式統計がないこともあります
  • 「殺処分」の定義が違う:病気やけがによる安楽死、収容中の自然死を含めるかどうかで数字は大きく変わります
  • 入口の数が違う:自治体が引き取る範囲が国によって違うため、殺処分数だけを比べても意味がはっきりしません

参考として日本の数字を挙げると、環境省の統計では2024年度(令和6年度)の犬・猫の引取り数は39,409頭、殺処分数は6,830頭(犬1,964頭、猫4,866頭)でした。この殺処分数には、譲渡に適さない個体の処分のほか、引取り後の病気などによる死亡も含まれています。

数字が「少ない」ことと、動物の状態が「良い」ことは同じではありません。殺処分ゼロをうたう国や施設でも、何を数えているのかを確かめることが大切です。

各国の動物福祉を詳しく知る

petee では、評価の高い国を中心に、法律や保護施設の実際を紹介しています。

まとめ

「ペット先進国」に公式な定義はありません。指標で見ると、世界動物保護協会の動物保護指数2020年版では、A評価の国はなく、B評価のオーストリア・デンマーク・オランダ・スウェーデン・スイス・イギリスが最上位でした。日本はEで、とくに畜産動物や使役動物、政府の責任体制の評価が低くなっています。

ただし、この指数は2020年時点の法律と政策の評価で、ペットの暮らしそのものや殺処分の少なさを測ったものではありません。別の指数では順位が大きく入れ替わり、殺処分数は国ごとに数え方が違います。

ランキングは「どの国が上か」を決めるためより、「自分の国は何が足りないと見られているか」を知るために使うのが役に立ちます。日本の場合、それは動物の感受性を法律で認めることと、ペット以外の動物まで守る仕組みでした。

(2026年10月 作成)

参考記事