サンフランシスコの動物シェルター
サンフランシスコの動物シェルター
以前掲載した「犬にとって最高の街|世界ランキング」において1位としてご紹介したサンフランシスコ。街全体で動物福祉を支える体制が整えられており、全米でも注目されています。
この記事では、サンフランシスコの動物シェルター情勢についてご紹介します。
動物シェルターの概要
サンフランシスコの動物シェルターは、地域の動物保護と福祉向上のために、2つの主要な組織によって運営されています。150年以上前の1868年に設立した民間の非営利団体である「SFSPCA(San Francisco Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」と、1989年に設立した公営機関の「SFACC(San Francisco Animal Care & Control)」です。これら2つのシェルターは、動物福祉の促進や里親探しを目的としつつ、役割分担をしながら連携しています。
SFSPCAは、主に動物の医療ケアや避妊・去勢手術、動物の里親制度の推進、地域住民への教育啓発活動を行っています。虐待や放置から保護された動物のリハビリテーションや、新しい家庭へのマッチングを支援するためのカウンセリングも提供しており、地域社会の意識を高める取り組みも積極的に進めています。
一方、SFACCは市が管理する公営シェルターで、迷子動物や放置された動物を収容し、動物の安全管理や法的措置を担当しています。市民からの苦情や通報にも対応し、場合によっては動物の保護や救助のための執行権も行使します。また、危険な動物への対処や公共の安全確保の役割も担い、動物の保護と地域の安心の両方を重視しています。
このように、SFSPCAは動物のケアと福祉支援、SFACCは安全管理と法的対応を中心とし、相互に補完し合いながらサンフランシスコの動物保護体制を支えています。
「ノーキル・ポリシー」
サンフランシスコの動物シェルターにおける「ノーキル・ポリシー」は、動物の殺処分を最小限に抑えるための方針です。1994年に施行された「サンフランシスコ動物保護条例」によって、殺処分の削減が正式に方針として打ち出されました。このポリシーは、動物が健康であり行動上の問題がない限り、里親が見つかるまで継続して保護を行うことを原則としています。例外として、動物が重篤な健康問題を抱え、治療が難しい場合や、著しく攻撃的な性格で他者に危険を及ぼす恐れがある場合のみ、SFACCにおいて殺処分が実施されます。
また、このポリシーを実現するため、サンフランシスコのシェルターでは、動物の健康管理や社会化プログラムを強化しており、動物の福祉を保つための様々なサービスが提供されています。地域住民に対しても、動物保護と適切な飼育方法に関する教育が行われ、ペットを飼う際の責任や「ノーキル・ポリシー」の重要性が広く共有されています。これにより、サンフランシスコは「ノーキル」推進都市として、他の都市にも模範となる取り組みを続けています。
規模とサービス
サンフランシスコのシェルターは、年間で数千匹におよぶ動物を保護しており、その大半が犬や猫ですが、ウサギ、鳥、爬虫類など多様な動物も対象としています。
SFSPCAは2022年度には約4,600匹の動物が里親を見つけて新しい家庭に迎えられています。さらに、数千件にのぼる医療ケア(避妊・去勢手術や予防接種など)や、虐待やトラウマから回復を目指すリハビリプログラムも実施しています。
SFACCは2022年度には約6,600匹の動物を保護し、その多くは迷子や虐待された動物です。SFACCの保護動物のうち、1,000匹以上が里親に引き取られており、保護した動物に対しても社会化トレーニングや行動改善プログラムが提供されています。市民からの通報による動物救助は年間1,000件を超え、地域の動物保護に大きく貢献しています。
また、これらの動物には高度な医療ケアやリハビリプログラムも提供されています。例えば、シェルターには獣医師や専門医が常駐し、先進的な医療設備を備えています。外科手術、歯科治療、内科ケア、皮膚治療、ワクチン接種、慢性病管理など、多様な医療サービスが提供されています。特に、安価または無料の避妊・去勢手術が提供されており、地域社会の動物の健康と管理に貢献しています。
さらに、虐待や長期間放置されていた動物には、心理的なケアも重視されています。訓練士が動物の社会化トレーニングを行い、ストレス軽減や行動改善を目的としたプログラムが提供されます。このプログラムによって、新しい家庭での適応がスムーズに進むよう支援されています。
まとめ
サンフランシスコのシェルターでは、地域全体で動物福祉を支える体制が整っており、動物の健康・行動面でのケアと、新しい家庭へのマッチングが重要視されています。「ノーキル・ポリシー」に基づくこの福祉体制は、他の都市のモデルにもなっています。
執筆者:SShima
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