アメリカの動物保護シェルター事情 – ノーキル方針の広がりと課題

アメリカの動物保護シェルター事情 – ノーキル方針の広がりと課題

動物を大切にする気持ちが強くなってきた今の社会では、動物を守る方法も変わってきています。
中でも注目されているのが、動物保護施設(シェルター)で行われている「ノーキル方針」という新しい取り組みです。この方針は、保護した動物の命を何よりも大切にして、できるだけ安楽死させないようにするというものです。

今までのやり方とは違うこの考え方は、特にアメリカで急速に広まっていて、動物の幸せについて考えるきっかけになっています。
この記事では、ノーキル方針とは具体的にどんな考え方なのか、アメリカでどのくらい広まっているのか、実際にどんなことをしているのか、そしてどんな難しさがあるのかについて、わかりやすく説明して いきます。

ノーキル方針の基本概念と普及の経緯


アメリカの動物保護施設で「ノーキル方針」という新しい取り組みが広まってきています。
これまでは、新しい飼い主が見つからない動物は安楽死させられることが多かったのですが、この方針では動物の命 を大切にし、新しい家族を見つけることに力を入れています。

この考え方のもとでは、保護された動物たちは命を落とすことなく、新しい家族に出会えるチャンスをもらえます。
保護施設の人たちも、動物たちのためにできる限りのことをして、よい飼い主を探し続けます。

こういった変化の背景には、動物愛護意識の高まり、成功事例の増加、そして関連法制の整備があります。
その結果、シェルターでの安楽死数は大幅に減少。2011年の約260万頭から、現在では年間約 92万頭まで減少しました。

一方で、毎年約410万頭の動物が新しい家庭に迎えられ、約81万頭が元の飼い主のもとに戻っています。これらの数字は、ノーキル方針が多くの動物の命を救っていることを証明しています。この新しい取り組みは、健康で人懐っこい動物には必ず適切な飼い主が見つかるという信念に基づいており、アメリカの動物保護の在り方を大きく変えつつあります。

ノーキル実現のための具体的な取り組み


ノーキルを実現するためには、多面的なアプローチが必要です。
ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会) によると、以下の取り組みが効果的とされています。

まず、地域全体での不妊・去勢プログラムの実施が重要です。
これにより、望まれない繁殖を防ぎ、シェルターに入る動物の数を減らすことができます。
ASPCAは、低コストまたは無料の不妊・去勢サービスを提供しています。

次に、フォスタープログラムの充実に力を入れています。
一時的なフォスター家庭を増やすことで、シェルターの収容能力を拡大し、より多くの動物を救うことができます。
また、行動トレーニングやリハビリテーションプログラムの実施も重要です。これにより、問題行動のある動物の里親になる可能性を高めます。

さらに、地域社会との連携強化も欠かせません。
動物福祉教育プログラムの実施や、低所得者向けのペットフード支援などを通じて、地域全体で動物保護の意識を高めることが重要です。
これらの総合的な取り組みにより、多くのシェルターが殺処分率を大幅に減少させることに成功しています。

ノーキル方針の課題:収容能力と長期滞在動物


それでも、動物を殺さない「ノーキル方針」を取り入れると、いくつか難しい問題が出てきます。
一番大きな問題は、動物を保護する施設がいっぱいになってしまうことです。アメリカの動物愛護団体の調査によると、多くのシェルターが動物でいっぱいになっているそうです。

この問題を解決するために、シェルターの人たちはいろいろな工夫をしています。
例えば、一時的に動 物を預かってくれる人(フォスター)を増やしたり、他のシェルターと協力したりしています。

もう一つの問題は、シェルターに長く滞在する動物が増えていることです。
長く滞在すると、動物はストレスを感じやすくなり、新しい飼い主が見つかりにくくなってしまいます。

そこで、シェルターの人たちは動物たちが快適に過ごせるように工夫しています。
例えば、動物の性格に合わせてしつけを教えたり、楽しく遊べるおもちゃを用意したりしています。

これらの工夫には二つの目的があります。一つは動物のストレスを減らすこと、もう一つは動物が人や他の動物と仲良くできるようにすることです。
こうすることで、新しい飼い主が見つかりやすくなると期待されています。

シェルターの人たちは、動物たちが幸せに暮らせるように、そして新しい家族と出会えるように、いろいろな工夫をしています。

ノーキル方針の課題:財政と人材


ノーキル方針の実施には、従来の方法と比べてより多くの資源が必要です。
それは、動物たちを長期間ケアし、新しい飼い主を見つけるための継続的な努力が求められるためです。

具体的には、長期的な医療ケアや適切な飼育環境の維持、動物の訓練、そして新しい飼い主を見つけるための活動などが、追加のコストにつながります。
これらの費用を賄うため、アメリカのシェルターではクラウドファンディングや企業スポンサーシップなど、さまざまな資金調達方法を活用しています。

また、スタッフの負担増加も課題の1つです。
ノーキル方針のシェルターでは、より多くの動物を長期間世話する必要があり、餌やり、掃除、健康管理などの日常業務が増加します。

さらに、新しい飼い主を見つける努力も必要です。
この継続的な負担はスタッフに大きなストレスを与える可能性があります。
そのため、一部のシェルターではカウンセリングの提供や新しい勤務体制の導入など、スタッフの負担を軽減し、長く働ける環境づくりに取り組んでいます。

このように課題はあるものの、多くのシェルターが動物の命を守るというノーキル方針の理念を実現するために努力を続けています。

まとめ

アメリカでは、保護動物を殺さずに新しい飼い主を探し続ける「ノーキル方針」が広まっています。
この方針により、殺処分される動物の数は大きく減少していますが、施設の過密や運営費用の増加といった課題も抱えています。

それでも、スタッフや地域の協力により、動物の命を守る取り組みが続けられています。

執筆者:IamYuko

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