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動物虐待に立ち向かうパサドのセーフ・ヘブン〜日本とワシントン州の課題を考える〜

動物虐待に立ち向かうパサドのセーフ・ヘブン〜日本とワシントン州の課題を考える〜

アメリカ・カリフォルニア州では2019年1月以降、ペットショップは、アニマルシェルターもしくはレスキューセンターなどの動物保護施設から受け入れた子犬、ウサギ、子猫以外を販売することができなくなりました。違反すると、500ドル(約7万5000円)の罰金が課されます。

ロサンゼルスをはじめとした、カリフォルニア州の動物福祉は有名ですが、ほかの州はどうなんでしょうか。
今回は、ワシントン州で動物の保護やケアを行う、Pasado’s Safe Havenについて紹介します。

「パサドのセーフ・ヘブン」とは? 動物虐待撲滅に全力を注ぐワシントン州の拠点

Pasado’s Safe Haven(パサドのセーフ・ヘブン)は、ワシントン州に拠点を置いている非営利の動物福祉団体で、動物虐待の撲滅を使命として活動しています。

パサドのセーフ・ヘブンの主な活動内容

  1. 調査と救助

    動物虐待や放置に関する通報を受けて現地で調査を行います。そこで、虐待や放置が確認されると、警察や行政と協力して動物を救出します。

  2. シェルターの運営

    カスケード山脈のふもとにある東京ドーム約7個分の広大な土地に、パサドのセーフ・ヘブンの保護区があります。ここでは、約200頭の動物が自然に近い環境で暮らしています。

  3. 教育と啓発活動

    動物福祉について多くの人に知ってもらうために、教育プログラムや見学ツアーを実施しています。 対象は子供から一般の大人まで広く、動物への思いやりと責任感を社会全体に広めることを目指しています。

  4. 立法活動

    動物を守る法律を強化するために、動物福祉に関する立法改善に尽力しています。

パサドのセーフ・ヘブンの設立の背景

パサドのセーフ・ヘブンの誕生は、1992年に起きた「パサドの悲劇」から始まります。 当時、ロバの「パサド」はワシントン州で3人の少年から虐待を受け、命を落としました。社会に大きな衝撃を与え、動物への被害への意識を高めるきっかけとなりました。この悲劇を忘れないために、「パサドのセーフ・ヘブン=パサドの安全な避難所」が設置されました。

以来、パサドのセーフ・ヘブンは、動物虐待の撲滅を使命として、動物の保護や救出、動物の教育、啓発活動を行い、みんなで暮らせる世界の実現を目指して活動を続けています。

ブルーノの物語:パサドのセーフ・ヘブンが伝えたい命の重さ

ここで、パサドのセーフ・ヘブンが動物虐待法強化と司法制度の改善に尽力するきっかけとなった「ブルーノ」の物語をご紹介します。

パサドのセーフ・ヘブンは毎日、極悪なペット繁殖施設、飢餓、置かれたような絶望的な状況から動物たちを救うために活動しています。この活動には「闘犬」の犠牲になった動物たちの保護も含まれています。

ブルーノも闘犬として利用され、体には無数の噛み跡やBB弾の痕跡が残っていました。
一般人の通報から、パサドのセーフ・ヘブンはブルーノを保護し、警察や検察を通じて虐待をした犯人の裁判に力を入れていました。

しかし、裁判の結果、有罪判決は出たものの、犯人には懲役刑が課されませんでした。 最新のワシントン州では、2019年に動物虐待防止法が成立し、悪質な場合には最大10,000ドル(約150万円)の刑金や最大7年間の刑罰が科されるようになっていますが、当時の法律では十分な処罰ができなかったのです。

この判決は、凶悪な動物虐待に対する裁判としては、非常に残念な結果でした。
だからこそ、パサドのセーフ・ヘブンは動物虐待法の強化と司法制度の改善に尽力し、ブルーノのような動物たちがいつか正当な裁きを受けられるように全力を尽くしています。

パサドのセーフ・ヘブンで保護されてから1年半後、ブルーノは癌と診断されましたが、治療の末、大好きな人たちに囲まれて、天国へ旅立ちました。

壮絶な過去があったにも関わらず、ブルーノは人も犬も大好きで、いつも尻尾を振り、出会った人すべてに愛情を示してくれました。

パサドのセーフ・ヘブンのスタッフは、「ブルーノは引き取り手が見つかりませんでしたが、虐待を受けた動物にとって、第2の人生がどれほど大切なものかを私たちに教えてくれました。」と語っていました。

ワシントン州と日本に共通する課題:動物虐待への罰則はこれで十分?

ブルーノの事例は、ワシントン州だけの問題ではありません。
ここでは、ワシントン州と日本での動物虐待に関する罰則を比較してみましょう。これは、虐待によって動物が死亡しなかった場合の罰則です。

ワシントン州:動物虐待防止法に基づく罰則

  • 最大10,000ドル(約150万円)の罰金
  • 最大7年間の懲役刑

日本:動物の愛護及び管理に関する法律に基づく罰則

  • 最大100万円の罰金
  • 最大1年の懲役刑

※殺した場合は、最大5年の懲役または最大500万円の罰金

逆に言えば、動物が死ななかった苦痛に対しては、悪質なケースでもこれくらいの罰則で済んでしまうのです。

虐待を発見して救助まではできても、現在の法律では重い罪として裁くことができないため再発が続いています。
動物虐待を根本から撲滅していくためには、罰則の強化と改善が必要であり、これはワシントン州と日本共通の課題であると言えるでしょう。

まとめ

今回は、ワシントン州のパサドのセーフ・ヘブンの活動をご紹介しました。パサドのセーフ・ヘブンは、動物たちを保護するだけでなく、動物虐待の撲滅を目指して法改善にも力を注いでいます。

ご紹介した通り、動物虐待に対する罰則はワシントン州も日本もまだ軽く、動物虐待を軽視している人が存在することも事実です。

まず筆者の率直な感想として、ワシントン州と日本の罰則に大きな差はなく、どちらも軽すぎると感じました。動物を虐待しても5~7年で刑務所から出られる罰則は、あまりにも軽すぎるのではないでしょうか。

あなたはこの問題をどう考えますか?

パサドのセーフ・ヘブンなど、動物福祉団体の活動を通じて世界全体で動物との向き合い方がより良くなることを心から願っています。

執筆者:深田龍誠

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