アメリカの動物愛護事情 4

アメリカの動物愛護事情 4

動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals:PETA)

日本語では英語の頭文字を取って「ピータ」(PETA)と呼ばれているアメリカの動物の権利を主張する運動団体、動物保護及び動物擁護団体である「動物の倫理的扱いを求める人々の会」をご存じでしょうか。


引用元:https://www.peta.org/donate/ways-to-support-peta/

動物は、食べ物、衣類、実験、娯楽、いかなる虐待のためにも存在しているわけではない」というスローガンを掲げているPETAは、世界最大の動物愛護団体で、全世界で900万人以上の会員と支持者がいます。多くのセレブリティもサポーターに名を連ねています。

https://www.peta.org/media/psa/type/print/?category_name=celebrities

PETAは、人間至上主義の世界観である種差別主義に反対し、多くの動物が最も長期間、最も激しく苦しんでいる4つの分野、実験室、食品産業、衣料品取引、エンターテインメント・ビジネスに焦点を当てて活動をしています。また、残酷な殺処分や家畜に対する虐待、鎖につながれたままの飼い犬、闘鶏、闘犬、闘牛に対しても反対の姿勢を表明し、こうしたさまざまな問題に取り組んでいます。

主な活動としては、一般市民への教育、調査報道、動物救済、特別イベント、著名人の参加による抗議キャンペーンなどを通じて活動しています。

動物たちも痛みや空腹を感じる

PETAの創設者であるイングリッド・ニューカーク氏の言葉で「空腹や痛み、渇きを感じるのは、ネズミでもブタでも犬でも少年でも同じです」というものがあります。PETAの真髄はここから始まっています。ダウンジャケットのために毛をむしられる鳥、一度も太陽を見ることなく狭い檻に監禁されて抗生物質で4倍にも太らされる鶏、不潔な環境で殺される(食用として)ためにだけ飼育される各種畜産動物、繰り返される動物実験で人工的に疾患を負わせられる動物たち…。人間が人間だけのために搾取している動物たちの権利。PETAが主張するのはこうした言葉を発せない動物たちの命の権利です。

数年前、ニューヨークで偶然PETAの活動を目のあたりにしたことがあります。毛皮を着ている人々を揶揄しているものでした。最近では、ウサギの毛皮のブーツを履いていたビヨンセやヘビ皮ブーツを履くリアーナがPETAの非難の対象になりました。動物を捕獲する際にひどい暴力が行われ、生きたまま皮を剥がれるなど残虐な行為が背後にあること、こうした商品を購入する人たちを対象に動物たちが殺戮されているということを考えてほしいというのがPETAの訴えるところです。

では、私たちに何ができるでしょうか

大半の人々は、肉を食べ、革を身につけ、サーカスや動物園に行ったことがあるでしょう。ペットショップで愛する 犬や猫を購入したこともあるでしょうし、美しい鳥をかごの中で飼った人もいるでしょう。ウールやシルクを身につけたり、マクドナルドのハンバーガーやケンタッキーのチキンを食べたり……。これらの行為が動物に与える影響など考えたこともなかったのではないでしょうか。

すべての動物は、人間と同じように、同じ程度に苦しむ能力を持っています。彼らは私たち人間と同じように痛み、喜び、恐怖を感じるとともに、欲求不満、孤独、母性愛をも感じることができる命ある存在です。彼らの欲求を妨げるようなことをする際には、人間である私たちは、動物たちに尊敬の念を抱きつつ、彼らに配慮する道徳的義務があります。

屠殺する必要がなくなる時代が来る?

ここ最近アメリカのニュース番組で「実験室育ち」(“lab-grown”)の鶏肉が販売を承認されたニュースが報道されました (米時間2023年6月22日)。つまり、屠殺された動物に由来しない食肉、動物細胞から細胞培養で作られた鶏肉がアメリカ農務省の規制当局により全米のレストランやスーパーマーケットの棚に並べられることが許可されたのです。農務省はアップサイド・フーズ社とグッド・ミート社に許可を与えました。

https://apnews.com/article/cultivated-meat-lab-grown-cell-based-a88ab8e0241712b501aa191cdbf6b39a

この動きは、動物への危害を排除し、放牧や家畜用飼料の栽培、家畜排泄物による環境への影響を大幅に削減することを目的とした、食肉生産の新時代を開始するものとして注目を集めています。
現段階では鶏肉だけですが、いずれは豚肉、牛肉もこの流れとなっていくかもしれません。

おわりに

『Food, Inc.』、『Cowspiracy』、『Forks over Knives』などのドキュメンタリーを観ているうちに、自然と菜食主義になってきた私…PETAのような確固たるモットーが最初にあったわけではありませんが、人間以外の動物がすべて人間のために利用されるためだけに存在するという考え方には根本から疑問を感じます。

動物愛護の支持者たちは、動物には固有の価値があり、それは人間にとって有用であるかどうかといった観点とは全く別の価値であると主張します。確かに。生きる意志を持つすべての命ある生き物は、痛みや苦しみから解放されて生きる権利があると思います。

最後に、個人的には素敵だなと思っているPETAの提案を紹介します。

PETAは動物を愛し適切な世話を行う人間の行為には反対はしていません。そのうえで、ペットと言う言葉は軽蔑的であるとし、より尊敬的なコンパニオン(companion、「仲間」の意)を使うことを提案しています。また、ペットの飼い主もオーナー(owner, 「所有者」の意)ではなく、ヒューマンケアラー(human cares, 「世話を行う人」の意)やガーディアン(guardians, 「保護者」の意)と呼ぶことを勧めています。

アニマルコンパニオン、ガーディアンという呼び方が主流になり、屠殺のない(あるいは極少ない)背景で食肉が出回ることになる世の中が訪れる近未来をひそかに願ってしまいます。 この世から動物虐待の行為が無くなることを強く願いつつ…。

執筆者:近松恵子

参考資料

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