アメリカの動物愛護事情|動物虐待は連邦犯罪、ペットショップ販売禁止は8州に拡大
世界中に、ペットとの暮らしを楽しむ人がいます。日本でも多くの人が犬や猫と暮らしていますが、世帯の約7割がペットを飼っている「ペット大国」アメリカは、動物との関わり方そのものが日本と大きく違います。
この記事では、アメリカの動物愛護の根本にある法律と考え方、ペットの迎え方の実態、そして全米に広がる「ペットショップでの生体販売禁止」の動きを、最新のデータとともにご紹介します。
目次
動物虐待は「連邦犯罪」|法律で守られるアメリカの動物たち
アメリカでは、ペットはもはや単なる動物ではなく、大切な家族の一員です。
日本では「お世話をする」という観点から、ペットを子どものように扱う傾向がありますが、アメリカでは「ペットはパートナー」という考え方が一般的です。
ASPCA|世界で2番目に古い動物保護団体
1866年、ニューヨークで「米国動物虐待防止協会(ASPCA: The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」が設立されました。イギリスのRSPCAに続く、世界で2番目に古い動物保護団体です。
「動物は人間によって親切に、敬意をもって扱われるべき存在であり、法律で保護されなければならない」というASPCAの信念は、いまもアメリカの動物愛護の指針になっています。
動物虐待は重罪(Felony)
アメリカでは、悪意をもって動物を虐待した場合、全50州で重罪(Felony)として扱われます。世話をせずに放置したり、粗末に扱ったりした場合も厳しく処罰されます。
さらに2019年、動物虐待・拷問防止法(PACT Act: Preventing Animal Cruelty and Torture Act)が成立し、それまで州ごとに管轄していた動物虐待の取り締まりが、連邦レベルにまで広がりました。
州によって法律が違うため、州をまたぐと逃れられてしまうことがあった動物虐待を、国レベルで取り締まれるようになったのです。最高刑は懲役7年です。
ペットショップに犬や猫がいない?アメリカのペット事情
「ペットショップ」と聞くと、日本ではガラスのショーケースに子犬や子猫が展示されている光景を思い浮かべるでしょう。
しかしアメリカでペットショップといえば、ペット用品を扱う店のことです。日本のように犬や猫が「商品」として展示されている店は、ほとんどありません。
多くのアメリカ人は、地域の動物保護施設(シェルター)やレスキュー団体にいる犬や猫を家族として迎えます。動物を扱うペットショップがある場合でも、店が地域のシェルターと連携し、そこで保護されている動物の譲渡を仲介する形が主流になっています。
シェルター同士の連携
アメリカ全土に、譲渡活動を積極的に行う団体が数多くあり、それぞれがホームページで情報を公開しています。
施設間のネットワークも密で、「こんな犬を迎えたい」というイメージ(犬種・色・サイズなど)がある場合、訪ねた施設にいなくても、ほかの施設の情報を教えてもらえることも珍しくありません。
どの施設もオープンで、訪問者を気持ちよく受け入れてくれます。「保護施設からペットを迎えることが当たり前」という点が、日本との最も大きな違いです。
アメリカ人はどこからペットを迎えているのか(最新データ)
米国ペット用品協会(APPA)の2024年調査によると、アメリカでは約9,400万世帯(全体の71%)がペットを飼っており、犬は約6,800万世帯、猫は約4,900万世帯にいます。
では、その犬や猫はどこから来たのでしょうか。
犬の入手先(APPA 2024年調査)
- シェルター・保護団体・レスキューから譲渡
- 約33%
- 友人・親戚から
- 約25%
- ブリーダーから
- 約23%
- ペットショップから
- 約13%
猫の入手先(APPA 2024年調査)
- シェルター・保護団体・レスキューから譲渡
- 約37%
- 野良猫を拾った
- 約24%
- 友人・親戚から
- 約24%
- ペットショップから
- 約11%
引用元:HumanePro: Pets by the numbers
ペットの入手経路には報告義務がないため厳密な数字ではありませんが、犬猫ともに「シェルターや保護団体から」が最も多く、ペットショップは1割程度という傾向がはっきり出ています。
また、全米のシェルターの統計をまとめる「Shelter Animals Count」によると、2025年に全米のシェルターに入った犬猫は約579万頭。そのうち約70%が譲渡され、安楽死は約10%まで下がっています。
ペット(生体)販売禁止は8州に|パピーミル撲滅への動き
パピーミルとは、直訳すると「子犬工場」。利益のために、犬や猫を過酷で非人道的な環境で大量繁殖させる悪質なブリーダー・ビジネスのことです。
米国人道協会(HSUS)の調べでは、アメリカには約1万か所のパピーミルが存在するとされ、なかでもミズーリ州は10年以上連続で最多となっています。
このパピーミルから子犬を仕入れて販売するペットショップを断つため、「ペットショップでの犬・猫(・ウサギ)の販売を禁止する法律」が州レベルで広がっています。
販売禁止を導入した州(2026年時点)
- カリフォルニア州(2019年施行):全米初。動物保護施設から引き取った犬・猫・ウサギ以外の販売を禁止(AB-485)
- メリーランド州(2020年施行)
- メイン州(2020年施行)
- ワシントン州(2021年施行、新規店舗が対象)
- イリノイ州(2023年施行)
- ニューヨーク州(2024年12月15日施行):「パピーミル・パイプライン法」。ペットショップでの犬・猫・ウサギの販売を禁止
- オレゴン州(2023年成立、2028年9月から全面施行)
- バーモント州(2024年成立)
これらの法律は、ブリーダーが自分で繁殖した子犬を直接家庭に販売することは禁じていません。あくまで「ペットショップが業者から仕入れて売る」ルートを断つものです。
(アメリカでブリーダーから迎える方法は、アメリカのおすすめブリーダーサイトで紹介しています)
ニューヨーク州の法律では、ペットショップはシェルターや保護団体と提携して譲渡会の場所を提供することが認められており、「販売する店」から「譲渡をつなぐ店」への転換が進んでいます。
残る課題
この動きは、動物愛護の精神に沿った大きな前進ですが、まだ一部の州に限られています。
そのため、次のような懸念の声もあります。
- 規制のない州でパピーミルを運営する業者が、オンライン販売や州境を越えた販売に流れる
- 人気犬種が高額で闇取引される「ブラックマーケット」が生まれる
- 真摯に繁殖している正規のブリーダーの営業にも影響が出る
実際、規制の抜け穴となるオンライン販売や、ブリーダーを装った転売業者への対策が、次の課題として議論されています。
おわりに
声を発することのできない動物たち。
命ある生き物として地球に存在する点では、私たち人間と何ら変わりはありません。
アメリカでは、「動物は保護されるべき存在」という考え方が、連邦法での虐待の厳罰化と、州ごとのペットショップ販売禁止という2つの形で法律になりつつあります。
「命」を「商品」として扱う生体販売ビジネスがなくなり、動物愛護のスピリットが世界各国に広まることを願います。
執筆者:近松恵子
(2026年9月 各州の法規制と統計データを更新)
参考記事
- HumanePro: Pets by the numbers
- Shelter Animals Count
- ASPCA: The New York Puppy Mill Pipeline Law
- Animal Legal Defense Fund: California Becomes First State to Ban Retail Sale of Companion Animals


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