オーストラリアの動物愛護事情 ~動物保護を支える人々~

オーストラリアの動物愛護事情~動物保護を支える人々~

世界的にもペットの世帯飼育率がトップクラスのオーストラリアでは、たくさんの犬や猫、動物たちが暮らしています。しかし、家庭環境の変化や動物の問題行動、健康上の理由等により、譲渡を余儀なくされる動物もおり、不適切な飼育や虐待を受けた動物が保護されることも少なくありません。
家を失ったペットの命や暮らしを守るため、オーストラリアでは1,000以上もの動物保護団体が活動しています。このような動物保護団体の多くは慈善事業のため、オーストラリア国民や地域コミュニティ、各企業や団体などからいろいろな支援を受け、動物保護活動に努めています。
では実際に、どのような支援が行われているのでしょうか?

募金

募金箱の設置

オーストラリアでは、主要なスーパーマーケットやペットショップなど、いろいろな場所に募金箱が設けられ、いつでもだれでも簡単に募金することができます。

インターネットで

各動物保護団体のウエブサイトでは、ネット上で簡単に募金することができます。2ドル程度の少額から受け付けている団体もあり、毎月50ドルや100ドルなど、一定金額を募金できるシステムを導入している団体もあります。
募金した額は、税金非課税対象となります。

リサイクルでも

西オーストラリア州のRSPCAオーストラリアでは、ビンやペットボトル、アルミニウム缶などをリサイクルする際、その交換額を寄付することが可能なシステムを導入しています。このシステムは、動物を助けるために何かをしたいと願っている子供や、経済的に大きな寄付をすることが難しいお家でも、動物保護活動に参加できる機会を付与するために生まれたシステムです。

遺産の寄付

遺産の一部、もしくはほとんどを動物保護団体に寄付することを希望される方は生前にその手続きを行うことができます。

スポンサー・サポーター

オーストラリアの大きな動物保護団体では、数多くの企業や団体がスポンサーやサポーターとなり、保護活動を支援しています。
企業や団体にとってRSPCAオーストラリアのように大きな動物保護団体のスポンサーになるメリットの一つは、オーストラリア全土におよぶイベントやテレビなどのメディアを通してクリーンなイメージで宣伝活動ができることです。

RSPCAオーストラリアの主なスポンサーおよびサポーターは、ペットフード会社のロイヤルカナン、世界的な動物用医薬品会社のエランコ、オーストラリア全土にフランチャイズを持つペットショップなど動物関連会社の他にも、銀行や映画館などが登録しています。

テレビ番組やコマーシャル、イベント開催

テレビなどのメディア

オーストラリアで最も大きな動物保護団体RSPCAオーストラリアでは、”RSPCAアニマルレスキュー”という人気テレビ番組を放映したり、コマーシャルでイベントなどのお知らせを行っています。
”RSPCAアニマルレスキュー”は2007年から2012年までの番組ですが、現在に至るまで再放送され続けています。
この番組では、動物の不適切な飼育や虐待が疑われる家にRSPCAオーストラリアの捜査員が強制的に訪問し、必要に応じて動物を保護し、その後までの過程をドキュメントした番組です。虐待と判断された場合、飼い主に対して多額の罰金が科せられることもあり、番組を通じて、動物虐待の罪の重さを視聴者に伝える効果も期待できる番組です。

イベント

各動物保護団体では、各地でさまざまなイベントを開催し、その収益金やイベントで集められた募金を団体の活動費用に充てています。
オーストラリア最大の動物保護団体RSPCAオーストラリアでは年に2回、ミリオンポーウォークとカップケーキデーという大きなイベントをオーストラリア全土で開催しています。

ミリオンポーウォーク

オーストラリアの各地で毎年5月の日曜日に開催されるイベントです。
広大なオーストラリアの36カ所の会場(2023年)で、同日同時間帯(地域によっては、若干ずれることがあります。)、イベントに参加登録した犬と飼い主が2㎞もしくは4㎞のウオーキングを一斉に行うというイベントです。
会場には、犬に関連するいくつもの出店がならび、ウォーキングの前後にもファミリーや友人たちとドッグイベントを楽しむこともできます。

カップケーキデー

カップケーキデーは、カップケーキなどのスイーツを作り、それを販売して収益金を寄付するという、オーストラリア全土で年に1回開催されるイベントです。
イベント(スイーツの販売)は、開催期間中(2023年は8月の1ヵ月間)、都合の良い日に、自宅や学校、職場など好きな場所で行うことができ、各家庭や友人同士など、小人数で実施することもできます。

ボランティア

多くの動物保護団体の活動を支えているのは、たくさんのボランティアの方々です。

例えば、クィーンズランド州のRSPCAオーストラリアでは、お給料をもらって働いている人は約470人、そして約2,000人のボランティアが保護された動物たちを支えています。
違う州の異なる動物保護団体、例えばSAFE(Saving Animals from Euthanasia Inc.)という西オーストラリア州で活躍している動物保護団体では、およそ2,100人のボランティアが登録・活動しています。

実際の統計値は算出されていませんが、このような数値から推定すると、オーストラリアの動物保護団体で活動するボランティアの数は、おそらく数万人もしくはそれ以上なのかもしれません。
ボランティアに登録できる年齢は各動物保護団体や各州により異なりますが、16歳以上が多く、18歳以上とする団体もあります。
ボランティア活動は、週に1日以上、1日数時間から6時間程度など、本人の希望に合わせてシフトが調整されます。

では、ボランティアの仕事には、どのようなものがあるのでしょうか?

  • シェルターに収容された動物の世話
  • 譲渡に関わる事務的業務
  • 募金活動
  • イベントスタッフ
  • 動物の正しい飼い方などについて、飼い主への指導や教育活動
  • フォスターケア
  • フォスターケアとは、保護された動物を一時的に預かるシステムで、動物の保護活動でとても重要な役割を果たしています。フォスターケアについての詳しい情報は、”オーストラリアの動物愛護事情~保護動物を支えるフォスターケアシステム~”をご参照ください。
    このように、オーストラリアでは多くの人々が直接的に、もしくは間接的に動物保護に関わることができるようなシステムが構築されており、さまざまな動物保護活動がさかんに行われています。

参考ウェブサイト

執筆者:ルール久枝

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