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ドイツの動物保護施設ティアハイムとは|訪問してわかった収容数・運営費・譲渡の条件と「殺処分ゼロ」の中身

ドイツの保護施設ティアハイムはどんなところ?殺処分ゼロを実現するに

ドイツには、「ティアハイム(Tierheim)」と呼ばれる動物保護施設が各地にあります。ドイツ語で「動物の家」という意味で、犬や猫だけでなく、ウサギ、鳥、魚、馬まで、さまざまな動物が新しい家族を待っています。

ドイツは「殺処分ゼロの国」と紹介されることがよくあります。ただ、正確には「安楽死がまったくない」という意味ではありません。ドイツの動物保護法は合理的な理由のない殺処分を禁じており、ティアハイムでは「収容しきれないから」「引き取り手が見つからないから」という理由で動物を殺すことはしません。一方で、治る見込みのない病気で苦しみが続く場合などには、獣医師の判断で安楽死が行われることがあります。

この記事では、ティアハイムの基本と、それを支える法律や考え方を整理したうえで、バイエルン州のティアハイムを訪ねた現地レポートをもとに、収容数・施設の広さ・運営費・資金集めの実際を紹介します。後半では、譲渡の条件や評判、日本との違いもまとめます。

ティアハイムとは|「動物の家」と呼ばれる保護施設

ティアハイム(Tierheim)は、Tier=動物、Heim=家を組み合わせた言葉で、ドイツの動物保護施設を指します。多くは自治体の施設ではなく、地域の動物保護協会(Tierschutzverein)が運営する民間の施設です。

ドイツ最大の動物保護団体であるドイツ動物保護連盟(Deutscher Tierschutzbund)によると、同連盟には16の州連盟と740以上の地域の動物保護協会が加盟しており、それらが運営するティアハイムは約550カ所にのぼります(2023年9月の同連盟の発表)。加盟していない施設もあるため、ドイツ全体ではさらに多くの保護施設があります。

日本の保護施設は犬と猫が中心ですが、ティアハイムではウサギやモルモットなどの小動物、鳥、魚、亀や蛇などの爬虫類、ポニーなどの大きな動物まで受け入れ、種類ごとにエリアを分けて飼育しています。

ティアハイムを支える仕組み|動物保護法と動物福祉

動物保護法:合理的な理由なく動物を殺してはならない

ドイツの動物保護法(Tierschutzgesetz)は、第1条で「何人も、合理的な理由なく動物に痛み・苦しみ・害を与えてはならない」と定めています。さらに第17条では、合理的な理由なく脊椎動物を殺した者に、3年以下の自由刑または罰金を科すとしています。

「飼い主が飼えなくなった」「施設がいっぱいになった」は、動物を殺す合理的な理由とは考えられていません。そのため、行き場を失った動物はティアハイムが受け入れ、新しい飼い主が見つかるまで世話を続けます。これが、ドイツが「殺処分ゼロ」と言われる背景です。

アニマルウェルフェアと「5つの自由」

アニマルウェルフェア(動物福祉)は、動物が生まれてから死ぬまでの身体的・心理的なストレスをできるだけ減らし、良い状態で暮らせるようにするという考え方です。ドイツではこの考え方が広く浸透しており、その指針として「5つの自由」が知られています。

  1. 飢えと渇きからの自由
  2. 不快からの自由
  3. 痛み・負傷・病気からの自由
  4. 恐怖や抑圧からの自由
  5. 正常な行動を表現する自由

もともとはイギリスで家畜の飼育環境を見直す中から生まれた考え方で、いまでは世界中で動物の状態を測るものさしとして使われています。

ペットショップで犬猫を買うのは一般的ではない

ドイツでは、ペットショップの店頭に子犬や子猫が並ぶ光景はほとんど見られません。法律で一律に禁止されているわけではありませんが、動物福祉の考え方が浸透していることもあり、新しく犬や猫を迎えるときは、ブリーダーから直接迎えるか、ティアハイムから引き取るのが一般的です。

ティアハイム訪問記|収容数と施設の広さ

ここからは、ドイツ在住のライター(IamYuko)が2023年に訪れたティアハイムの訪問記です。数字はいずれも取材時(2023年)のものです。

ミュンヘンやガルミッシュ=パルテンキルヒェン周辺の位置を示す地図
今回は、ドイツのバイエルン州ガルミッシュ=パルテンキルヒェン(Garmisch-Partenkirchen)にある動物保護施設にお邪魔しました。州都ミュンヘンから車で約1時間の場所にあります。

動物保護施設の入り口で歩く猫とそれを見つめる笑顔の子供たち
入口では、さっそく1匹の猫が迎えてくれました。

Eingang Tierheim」と書かれた黄色い看板と背景の山々
施設の入口です。後ろには2000m級のアルプスの山がそびえています。
Eingang=入口
Tierheim=動物保護施設(Tierは動物、Heimは家という意味)

施設での説明によると、バイエルン州には80の動物保護施設があり、約1200人が働いているそうです(2023年時点)。

収容されている動物の数

取材時に、この施設で暮らしていた動物は次のとおりです。

  • 猫:80匹
  • 犬:13頭
  • ウサギやモルモット:40匹
  • 鳥:100羽
  • 魚:200匹
  • 馬(ポニー):3頭

ほかに亀や蛇などもいます。動物は入れ替わりながら、この施設では年間を通して約1200匹の動物を受け入れているそうです。

施設の広さ

施設全体の広さは10,000㎡で、野球場1つ分ほどです。そのうち建物の面積は6,000㎡あります。

猫部屋の広さ

猫部屋には8㎡、12㎡、20㎡の部屋があり、猫の大きさや年齢によって分けられています。

ガラス越しに白黒の猫を見つめる、猫耳のニット帽をかぶった子ども
青いフレームのガラス越しに見える猫部屋と、手前に集まる3匹の猫

1つの部屋で3〜4匹が暮らしています。

キャットタワーやおもちゃが置かれた部屋でラグの上で過ごす猫たち
生後3か月の子猫が、親子で暮らしている部屋です。

青いドアの部屋が並ぶタイルの廊下に掃除用具が置かれ、部屋の中に猫が見える
青いドアがずらりと並ぶこの棟は、すべて猫部屋です。

木造の猫部屋が並ぶ敷地内の石畳の通路を歩く子どもたち
こちらは、保護された野良猫が人に慣れるまで過ごす場所です。人が近づくと、隠れたり逃げたりします。

キャットタワーやカゴベッド、エサ皿が置かれた猫の保護部屋の様子
中は暖かそうで、十分な広さがあります。

犬部屋の広さ

犬部屋には20㎡と35㎡の部屋があり、猫と同じく体の大きさによって分けられています。
掲示板に貼られた、黄色い枠付きの保護動物の紹介カードと案内文
取材時には13頭の犬が保護されていました。

保護犬のプロフィールが書かれた黄色い額縁の紹介パネルが並ぶ
このうち4頭は、ウクライナでの戦争から保護された犬です。

ガラス窓の向こうの部屋の中で立つ茶色の犬と壁に掛けられたハーネス

両側に部屋が並ぶ犬舎の廊下と、ガラス窓からこちらを見る犬
この棟はすべて犬部屋です。近づくと、部屋の中から吠えられました。

タオルが積まれた棚や洗濯機、ペット用キャリーが置かれたテーブルがある部屋
こちらはランドリールーム。大家族の家のようです。

キャットタワーや猫用ベッドが設置された、猫が暮らすキッチンの様子
こちらはキッチン。3匹の年老いた猫が、このキッチンで気ままに暮らしています。

WC」のプレートと猫の耳と尻尾が付いたピクトグラムが貼られた青い扉
トイレのドアには、かわいい猫のマークが付いていました。

鳥・ポニー・小動物の部屋

木の枝やおもちゃが設置された広い室内で過ごすオカメインコなどの鳥たち
鳥も、わりと大きめの部屋で自由に暮らしています。

金網につかまりこちらを見つめる頭が黄色く体が緑色のオウム
このオウムは、話しかけると喋ってくれました。

屋外の木造建物の脇で並んで干し草を食べる2頭のポニー
木の壁に掲示されたポニー3頭の名前や紹介文が書かれた案内板
ポニーたちも、ここで仲良く暮らしています。

藁が敷き詰められた小動物の部屋で過ごすうさぎやモルモットと微笑む少女
ウサギやモルモットも、居心地が良さそうです。

照明ランプや木の橋が設置された広々とした屋内のガラス張り水槽
亀がいる水槽です。

壁に描かれた絵

この施設では、壁に描かれた温かみのある絵が印象的でした。

青い枠の上に飾られた猫の絵と、中に貼られた動物のイラストやポスター
寄付者の名前が書かれたリンゴの実がなる大きな木の壁画

木になっている林檎の一つひとつに、寄付をした人の名前が書かれています。

名前が書かれたリンゴが入ったカゴの周りに猫たちが集まる壁画
猫が入った青い包みをくちばしでくわえて飛ぶコウノトリが描かれた壁画。

ここでは、コウノトリも猫を運んでいます。

ロバの背中に犬が乗り、さらにその上に猫が乗っている様子を描いた壁画
動物たちがみんな仲良く、穏やかに暮らしている様子が伝わる絵です。

動物たちがティアハイムに来る理由

訪問した施設で聞いた、動物たちが保護されてくる主な理由は次の3つです。

多頭飼育の崩壊

飼い主が多頭飼いをして数が増えすぎ、世話ができずに放置されていたケースです。

飼い主の事情

引っ越しや入院、高齢などで、これ以上世話ができなくなったケースです。飼い主が亡くなったために保護されることもあります。

野良猫の保護

外で暮らしていた野良猫が保護されて、ここに来ることもあります。

このほか、ドイツのティアハイムでは一般に、迷子の動物や、虐待・不適切な飼育から行政を通じて保護された動物も受け入れています。

費用・運営|年間約60万ユーロをどう賄うか

スタッフとボランティア

訪問した施設の従業員は10人で、そのうち8人がフルタイムで働いています。

従業員のほかに、犬の散歩や猫と遊ぶ係を引き受けるボランティアが、常時100人ほどいるそうです。ボランティアの中には、施設で定期的に開かれる古市場にケーキを焼いて持ってきたり、野良猫の捕獲を手伝ったりする人もいます。

年間の運営費

年間約1200匹の動物を受け入れるこの施設の運営費は、年間約60万ユーロ(2023年8月のレートで約9,500万円)です。動物の食費のほか、医療費、施設の光熱費、従業員の給料、施設が所有する車の保険料などが含まれます。

そのうち、医療費が約10万ユーロ(同じく約1,590万円)を占めるそうです。

資金の集め方

施設の運営は、訪問者からの寄付、後述する古市場やコンサートの売り上げ、そして自治体からの補助で成り立っています。

自治体からの補助は、市の人口1人あたり1ユーロが施設に支払われる仕組みだと説明を受けました。取材時の説明では、たとえば人口1万8000人の市なら月に1万8000ユーロになるとのことでした。こうした支払いの単位や金額は、自治体と施設の契約によって異なります。

さらに、取材の3年ほど前(2020年ごろ)には、施設の改築・増築のための費用として、10万ユーロ(約1,590万円)の補助を受けたそうです。

夜間の管理

従業員が24時間待機しているわけではありません。夜12時以降は警察が施設の鍵を預かっていて、緊急時には警察が立ち入ります。

ペットホテル・古市場などの取り組み

この施設では、旅行や入院などで一時的に動物を預けたい人向けに、ペットホテルのサービスも行っています。1泊あたりの料金は次のとおりです(2023年時点、円は同年のレートでの目安)。

  • 大きな犬:18ユーロ(約2,900円)
  • 小さな犬:15ユーロ(約2,400円)
  • 猫:10ユーロ(約1,600円)

骨董品や絵画が並ぶ館内を歩く子供たちと大人の女性
2か月に1度、古市場が開かれます。後ろに飾られている骨董品や美術品などの売り上げは、施設の動物たちにかかる費用に充てられます。

不定期に開かれるコンサートの売り上げも、動物たちのための資金になります。また、社会見学に訪れる学校の子どもたちに、施設を案内することもしています。

花や緑に囲まれた建物の前でポーズをとる女性と子どもたち
お話を伺い、施設を案内してくださった施設長のTessy Lödermannさん(左)。

動物たちは安心して暮らせているようでしたが、動物たちのためにも、施設のためにも、温かい家庭に引き取られることを祈りながら施設を後にしました。

今回訪問した施設の情報は、次のサイトで見られます。
https://tierheim-garmisch.de/
https://www.instagram.com/tierheim_gap/

「殺処分ゼロ」の中身|安楽死はあるのか

ここまでの法律の考え方と、訪問した施設での話を合わせて整理します。

数が多いことを理由に殺すことはない

訪問した施設でも、日本とは違い、数が多すぎるという理由で殺処分されることは決してないと説明を受けました。ドイツの動物保護法が「合理的な理由のない殺処分」を禁じているため、収容数や保護期間の長さを理由に動物の命を絶つことはできません。高齢の動物や、なかなか引き取り手が見つからない動物も、施設で暮らし続けます。

獣医師の判断による安楽死はある

一方で、安楽死がまったく行われないわけではありません。治る見込みのない病気やけがで、強い痛みや苦しみが続くと獣医師が判断した場合には、注射による安楽死が行われます。

訪問した施設では、とても重い病気で痛みが激しい場合のほか、他の動物を襲うなど危害を加える危険が大きい動物について、殺処分が行われる場合もあると聞きました。

「殺処分ゼロ」をどう理解すればよいか

つまり、ドイツの「殺処分ゼロ」は、「どんな場合も動物を死なせない」という意味ではなく、「人の都合や施設の事情を理由に、健康な動物や治療できる動物を殺さない」という意味で理解するのが正確です。また、全国のティアハイムでの安楽死の数をまとめた公的な統計は見当たらず、「ゼロ」を数字で確かめられるわけではありません。

譲渡の条件|審査・面談・家庭訪問

ティアハイムから動物を引き取るには、厳しい審査があります。施設ごとに細かな基準は異なりますが、一般には次のような点が確認されます。

  • 住まいの広さや、ペットを飼える住宅かどうか(賃貸の場合は大家の許可など)
  • 家族構成と、家族全員が迎えることに同意しているか
  • 収入や勤務時間、留守にする時間の長さ
  • 散歩や日々の世話を誰が担当するか

面談に加えて、家庭訪問が行われることもあります。また、多くの施設では譲渡の際に「保護費(Schutzgebühr)」と呼ばれる費用を支払います。厳しい審査は、安易な譲渡で動物が再び手放されることを防ぎ、動物を守るための仕組みです。

ティアハイムの評判と課題

ティアハイムは、広い部屋と衛生的な環境で動物を飼育し、時間をかけて新しい家族を探す施設として、日本を含む海外から高く評価されています。動物の側に立った飼育環境づくりや、寄付・ボランティア・イベントで地域に支えられている点も、よく紹介される特徴です。

一方で、課題もあります。ドイツ動物保護連盟が2024年8月に発表した加盟施設へのトレンド調査では、69%のティアハイムが「収容状況は少なくとも非常に高い」と答え、そのうち49%は満杯または定員超過で、まだ受け入れる余地があると答えた施設は18%にとどまりました。新型コロナ禍のペットブームで安易に飼われた動物の手放しや、物価や獣医療費の上昇などが重なり、多くの地域で受け入れを一時停止する「受け入れストップ」が起きています。

「殺さない」ことを前提にしているからこそ、施設がいっぱいになると新たな動物を受け入れられなくなる。ティアハイムの仕組みは、譲渡が進むことと、安易に動物を手放さない社会があって初めて成り立つものだといえます。

日本の保護施設との違い

日本では、飼い主が飼えなくなった犬猫や所有者のわからない犬猫の引き取りは、主に都道府県などの自治体(保健所や動物愛護センター)が担っています。譲渡や返還につながらなかった場合には、殺処分が行われることがあります。殺処分数は環境省の統計で毎年公表されており、長期的に大きく減ってきています。

ドイツとの主な違いを整理すると、次のようになります。

  • 運営:ドイツは主に民間の動物保護協会が運営し、自治体が費用の一部を負担/日本は自治体の施設が中心で、民間の保護団体が譲渡を担うことも多い
  • 殺処分の扱い:ドイツは法律で合理的な理由のない殺処分を禁止/日本は収容・譲渡しきれない場合に殺処分が行われることがある
  • 受け入れる動物:ドイツは犬猫以外の小動物・鳥・馬なども受け入れ/日本の自治体施設は犬猫が中心
  • 犬猫の迎え方:ドイツはブリーダーかティアハイムが一般的/日本はペットショップでの購入も多い

制度の土台が違うため、ドイツの仕組みをそのまま日本に当てはめることはできません。ただ、「動物の状態を良くする」という動物福祉の考え方と、地域で施設を支える仕組みは、日本でも参考になる部分が多いはずです。

まとめ

ティアハイムは、ドイツ各地にある民間の動物保護施設で、犬猫から小動物、鳥、馬まで幅広い動物を受け入れています。訪問したバイエルン州の施設では、猫80匹・犬13頭など多くの動物が広い部屋で暮らし、年間約60万ユーロの運営費を、寄付や古市場、コンサート、自治体の補助で賄っていました。

ドイツの「殺処分ゼロ」は、動物保護法が合理的な理由のない殺処分を禁じていることに支えられています。ただし、獣医師の判断による安楽死はあり、近年は多くの施設が満杯に近い状態にあります。「殺さない」仕組みは、厳しい譲渡審査と、動物を安易に手放さない社会の両方があって成り立っています。

日本でも動物福祉への理解が進むことで、救える命はさらに増やせるはずです。ドイツの仕組みを知ることが、自分にできることを考えるきっかけになればと思います。

参考記事

執筆者:IamYuko(訪問記)、増田綾乃

(2026年10月 統合・更新。旧記事『ドイツの動物保護施設「ティアハイム」を訪問|収容数・部屋の広さ・運営コスト・殺処分の考え方を現地レポート』の内容を統合しました)

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