「もうこの卵は買いません。」世界を動かしたのは、法律ではなくマクドナルドだった
目次
世界のニワトリを救ったのは、動物保護団体ではなかった?
「動物福祉」と聞くと、多くの人は動物保護団体や政府の取り組みを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、それも間違いではありません。
しかし、ここ10年ほどで世界の畜産を大きく変えた主役は、意外にも私たちが普段利用している企業でした。
マクドナルド。
スターバックス。
IKEA。
ネスレ。
これらの企業はある日、ほぼ同じことを発表しました。
「将来的に、ケージで飼育された鶏の卵は使わない。」
たった一つの調達方針が、世界中の養鶏場を動かし始めたのです。
企業は「買う側」だから強い
考えてみてください。
もしあなたが毎年何億個もの卵を購入する企業だったら。
「来年から、この条件を満たした卵しか買いません。」
そう言うだけで、生産者は対応せざるを得ません。
実際に世界の食品会社や外食チェーンは、動物福祉に配慮した卵への切り替えを次々と表明しました。
法律が変わるのを待つより、市場の力で変えてしまったのです。
そもそも「ケージフリー」とは?
ここで出てくる「ケージフリー」とは、鶏をケージに閉じ込めず、鶏舎の中を自由に歩けるようにする飼育方法です。
よく「放し飼い」と混同されますが、少し違います。
ケージフリーは屋内で自由に動ける飼育方法。
放し飼いや放牧は、屋外へ出られる場合もあります。
つまり、ケージフリーは「最低限、自由に歩き回れる環境をつくろう」という考え方なのです。
企業はなぜ変わったのか
企業は急に優しくなったのでしょうか。
実はそう単純ではありません。
背景には、消費者の変化があります。
「この卵は、どんな環境で産まれたの?」
「動物に配慮した商品を選びたい。」
そんな声が少しずつ増えました。
さらに、SNSや動画配信サイトの普及で、世界中の畜産現場を誰でも見られる時代になりました。
企業にとって、「動物福祉を無視すること」がブランドリスクになり始めたのです。
イメージだけでは終わらない
もちろん、企業はイメージアップだけを目的にしているわけではありません。
最近では、ESG投資という考え方が広がっています。
環境(Environment)
社会(Social)
企業統治(Governance)
この3つを重視する企業へ投資する流れです。
動物福祉は「Social」の重要な評価項目の一つとして扱われるようになっています。
つまり、
「動物に優しい企業」
というだけでなく、
「長期的に信頼できる企業」
という評価にもつながるのです。
一社の決断が何千万羽を変える
例えば、世界中に数万店舗ある外食チェーンが「ケージフリー卵へ切り替える」と決めたらどうなるでしょう。
その会社が必要とする卵は年間で何億個にもなります。
それだけの需要が生まれれば、生産者は新しい設備へ投資します。
設備が増えれば価格も少しずつ下がります。
さらに他の企業も追随します。
こうして、たった一社の決断が何千万羽もの鶏の暮らしを変えることにつながるのです。
日本でも少しずつ変化が始まっている
日本でも、ホテルやレストラン、コンビニなどで動物福祉に配慮した食材を採用する動きが見られるようになりました。
平飼い卵を使ったスイーツ。
アニマルウェルフェアに配慮した牛乳。
放牧で育った牛のチーズ。
まだ市場全体から見れば一部ですが、確実に選択肢は増えています。
一方で、日本は土地が限られ、生産コストも高いため、海外と同じスピードで切り替えることは簡単ではありません。
だからこそ、日本ならではの方法で動物福祉を進めていくことが求められています。
買い物は「投票」と同じ
「自分一人が何を買っても変わらない。」
そう思うかもしれません。
でも企業は、毎日売れた商品のデータを細かく見ています。
動物福祉に配慮した商品が売れれば、その商品は増えます。
売れなければ、店頭から姿を消します。
つまり、私たちが買い物をするたびに、
「こんな商品を増やしてほしい。」
という意思表示をしていることになります。
世界を変えるのは、大きな運動だけではない
社会を変える方法というと、デモや法律改正を思い浮かべる人もいるでしょう。
もちろん、それも大切です。
しかし、動物福祉の世界では、それと同じくらい「企業」と「消費者」の力が大きな役割を果たしています。
企業は消費者の声を聞き、生産者は企業の方針に応え、社会は少しずつ変わっていく。
スーパーで卵を一パック選ぶこと。
カフェで注文するサンドイッチの卵に関心を持つこと。
そんな何気ない選択が、遠く離れた養鶏場の環境を変えるきっかけになるかもしれません。
食卓と畜産は、思っている以上に近いところでつながっているのです。
執筆者:ここ


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