動物介在療法って何? ~犬猫の殺処分頭数と人の医療費が削減できる~

動物介在療法って何? ~犬猫の殺処分頭数と人の医療費が削減できる~

日本での犬の殺処分件数は年々減少傾向にあるものの、環境省の調査によると、2022年4月1日〜2023年3月31日までの1年間で引き取り数22,392頭に対して、2,434頭が殺処分されています。

北海学園大学は2013年に発表した論文、「アニマルセラピー導入の医療費削減効果分析」において
アニマルセラピーが普及しセラピードッグの需要増加により、保健所で殺処分される犬の数を大きく減少させることが可能になる。
さらに高齢者施設へ導入することで通院回数が減少し、全国で年間1,350億円以上の医療費削減効果が得られる。

と、述べています。

要するに、保健所などで殺処分される犬や猫を動物介在療法の運営団体が引き取り、トレーニングして人の精神疾患などに役立てることで、人の心の問題にも犬猫の殺処分頭数の減少にもつながるというわけです。

さて、あなたは Pets As Therapy (PAT) という団体をご存知でしょうか。
イギリス全土で介護施設、病院、ホスピス、学校、刑務所などの施設を訪問し犬や猫を撫でたりする機会を提供している慈善団体です。

日本において、動物介在療法は発展途上ですが、
実はアメリカやイギリスではアニマルセラピーや動物介在療法というのが公的に認可され、病院で医師から「処方」という形で動物との暮らしや関わりを勧められます。

では、動物介在療法が普及することでどういった効果が得られるのでしょうか。

今回は諸外国の動物介在療法について知っていきましょう。

動物介在療法ってなに??

動物介在療法とは、動物とのふれあいを通じて心理的、身体的、社会的な効果を得る治療法のことで不安、うつ病、人間関係の問題、トラウマ、摂食障害など、多くの問題の解決に役立ちます。

動物介在療法にはさまざまな効果が報告されていますが、個々のニーズや症状に応じて処方されるため、効果は人それぞれです。

一般的には、動物とのふれあいが心身に良い影響を与えるとされており、ノルウェーやブラジルなど、多くの動物福祉先進国で普及が進んでいます。

動物介在療法の主なメリット

  1. ストレス軽減

    動物と触れ合うことで、心拍数や血圧が下がり、リラックスした状態が促進されます。これは、動物とのふれあいがオキシトシンなどの幸福ホルモンの分泌を促すためです。

  2. 感情の安定

    動物と接することで、感情的な安定が得られるとされています。特に孤独感や不安感が軽減されることがあります。

  3. 社会的スキルの向上

    特に子供や高齢者に対して、動物との交流を通じてコミュニケーションスキルや社会的スキルが向上することがあります。動物と接することで、他者との関わりが自然と促進されるためです。

  4. 身体的健康の改善

    体力や運動能力の向上、またはリハビリテーションのサポートとして利用されることもあります。動物との遊びや散歩などが身体活動を促進します。

  5. 認知機能の向上

    認知症の患者や精神障害のある人々に対して、動物と触れ合うことで認知機能の改善が見られることがあります。動物との相互作用が脳の刺激となり、認知機能を支える可能性があります。

  6. 教育的支援

    子供の教育現場では、動物と触れ合うことで集中力や学習意欲が高まることがあります。また、情緒的な成長を促進する助けにもなります。

動物介在療法は大きく3つ

アニマルセラピーというのは日本でしか使われない造語で、海外では動物介在療法などと呼ばれます。
日本でいうアニマルセラピーは本来、目的や活動によって動物介在療法・動物介在活動・動物介在教育の3つに分けられています。

  • 動物介在療法(Animal Assisted Therapy、略称:AAT)

    ストレスや不安の軽減、社会的な交流の促進、身体的なリハビリテーション、認知機能の改善を目的としています。
    この療法は、医療専門家が管理する治療計画に組み込まれており、犬などの動物は、特別な訓練を受けており、セラピストの指導の下で個人の治療を支援します。

  • 動物介在活動(Animal Assisted Activity、略称:AAA)

    動物介在活動は、訓練された動物と人との交流を通じて、生活の質や幸福度を高める活動のことをいいます。治療計画の一部となることが多い動物介在療法とは異なり、AAA は快適さ、喜び、社会的交流を提供することに重点を置いています。

    病院や老人ホーム、学校への訪問によって、動物が人々と関わり、ストレスを軽減し、気分を改善し、社会的つながりを育みます。

  • 動物介在教育(Animal Assisted Education、略称:AAE)

    動物介在教育(AAE)は、学習と発達を促進するために、教育現場に動物を組み込むものです。生徒の関与を高め、不安を軽減し、前向きな行動を育むことができます。
    セラピー犬に本を読んだり、動物と触れ合ったりして、自信、コミュニケーションスキル、共感を育みます。

動物介在療法の導入事例

アメリカ介護施設

アメリカ、ミシシッピ州南部にある介護施設が出した動物介在療法の効果についての研究論文では、7日間で30分の触れ合いでも統計学的に有意なレベルまで孤独感を軽減できることがわかったと記述されていました。

また、同じくアメリカのケンタッキー州ではメンタルヘルスケアに関して、動物介在療法を多くの病院で実施しており、患者だけではなく、介護施設で働くスタッフの疲労改善や気分転換にもつながるため、介護に関わる全ての人から期待されているようです。

イギリス小児科病院

イギリスのある小児科医院では、3名のボランティアスタッフと5頭のゴールデンレトリーバーがアニマルセラピーを行っていて、理学療法や作業療法の支援をするまで、さまざまな場面で動物の癒しの力を活用しているようです。

さらに、子供が怖がりがちな採血などで注射をするときや放射線の検査をするときに、注意をそらしたり不安を和らげたりする役割にもなってくれるなど動物介在療法の導入に対してポジティブな意見がたくさん得られたようです。

まとめ

本記事では、諸外国で主流になっている動物介在療法をご紹介しました。

日本では科学的検証が不十分なため普及が遅れていますが、動物介在療法は多くの難病患者を救う可能性を秘めています。また、保健所から引き取る頭数が増えれば殺処分頭数の減少にも繋がります。

日本でも動物介在療法が導入されることを、筆者は説に願うばかりです。

執筆者:深田龍誠

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