ロサンゼルス郡アニマルコントロールケアセンター : 行政による動物保護の取り組み
ロサンゼルス郡アニマルコントロールケアセンター : 行政による動物保護の取り組み
アメリカ・カリフォルニア州でペットショップによる生体販売(現在は犬、猫、うさぎのみ)が禁止されたニュースは、まだ記憶に新しく、日本でも大きな注目を集めました。
アメリカでは動物に関する法規制が進んでいますが、実は各州の行政機関が動物の保護やケアを行っていることをご存じでしょうか。
今回は、カリフォルニア州ロサンゼルス郡が運営するアニマルコントロールケアセンターについてご紹介します。
アニマルコントロールケアセンターとは
アニマルコントロールケアセンターは、ロサンゼルス郡アニマルケア&コントロール局が運営する動物保護シェルターで、ロサンゼルス郡内の動物と市民の福祉向上を目的としています。
(現時点で7か所)
運営団体:ロサンゼルス郡アニマルケア&コントロール局とは
ロサンゼルス郡アニマルケア&コントロール局(DACC)は、ロサンゼルス郡が運営する行政機関で、1974年の設立以来、動物の保護、管理、福祉に関する業務を行っています。
DACCの動物管理チームは、主に以下の業務を担当しています。
- 動物の放置や虐待に関する申し立ての調査
- 保護施設、ペットショップ、トリミング施設などが郡や州の規制に準拠しているかの監査
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違法な闘犬や闘鶏が行われていないか、地元警察と連携した強制捜査
(アメリカ全州では、動物福祉の観点から闘犬や闘鶏は違法で、重い罰則が適用されます)
このように、DACCは動物の保護やケアに加え、行政機関としての法的権限も持っています。
DACCの保護倫理:社会的意識をもった動物保護とは
DACCは「Socially Conscious Animal Sheltering(社会的意識を持った動物保護)」という保護倫理を掲げ、動物と市民にとってより安全で人道的なコミュニティの実現を目指しています。
この倫理は、動物を丁寧に扱い、苦しみを軽減することで、すべての動物にとって最善の結果をもたらすことを目的としています。
シェルターの特徴
アメリカ最大規模の行政運営シェルターのひとつで、年間約6,000頭の動物を保護し、危険にさらされている動物や人に関する年間20,000件以上の緊急通報に対応しています。
各シェルターには、保護中の動物の世話やエンリッチメント(※1)を担当する動物ケア技術者のチームが常駐しており、少なくとも1名以上の獣医師と動物看護師がサポートを行っています。
(※1)エンリッチメントとは、シェルターや保護施設にいる動物の生活環境を豊かにし、自然な行動を促すことで、ストレスや退屈を軽減するための取り組みを指します。
ノーキルが得られなかった動物たちの存在
アメリカで広まっている「ノーキル方針 (No-Kill)(※2)」という概念は、動物福祉団体や関心のあるコミュニティ内で大きな議論を引き起こしてきました。
ノーキル方針を掲げる団体は、動物の命を尊重し、新しい家族を見つける努力で多くの命を救っています。そのため、一般の人々は安心感を持っています。しかし、全ての動物がノーキルの対象になるわけではなく、シェルターの過密や人に危害を加える危険性があるなどの理由から受け入れが拒否された動物はこの方針に含まれません。
ロサンゼルス郡アニマルコントロールケアセンターでは、毎年多くの動物を受け入れる中で、健康や行動上の問題により譲渡が難しい動物もいます。
これらの課題に対応するため、ロサンゼルス郡動物保護管理局 (DACC) は「Socially Conscious Animal Sheltering(社会的意識を持った動物保護)」という新たな理念を掲げました。この理念では、動物の快適さと公共の安全を両立させ、譲渡可能な動物の数を最大化しつつ、苦しんでいる動物には人道的な安楽死を選択することもあります。
シェルターの取り組み
アニマルコントロールケアセンターの取り組みは以下の通りです。
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保護とケアの提供
DACCは、飼い主のいない動物を安全に保護し、ケアを提供する場所を提供しています。援助が必要な動物を拒否することはなく、全ての動物に適切なケアを行っています。
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譲渡の促進
健康かつ人との生活をするうえで問題のない動物は、新しい家を見つけることを目指しています。ただし、治療が困難な動物や、地域社会にとって危険な動物は譲渡対象にはなりません。
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医療と行動ケア
行き場のない動物については、医療上や行動上のニーズを慎重に評価し、それぞれのニーズに応じたケアを提供します。DACCは医療チームと行動エンリッチメントチームを通じて、動物の健康と行動を総合的にサポートします。
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安楽死の判断
DACCは、治療が困難な動物を受け入れることがあり、そうした場合、最も人道的な方法として安楽死を選択し、動物の苦痛を和らげます。
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動物の移送プログラム
DACCは、シェルターに空きがある地域に動物を移送するプログラムに参加しており、これにより毎年多くの動物が救われています。ただし、移送される動物は、新しい地域で他の動物や人間に危険を及ぼさないよう、健康や行動面での安全が確認されます。
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里親のサポート
DACCは、里親希望者が動物を適切に世話できるかを確認し、譲渡後サポートを提供しています。
具体的には、譲渡候補の動物が里親のライフスタイルに適しているか、里親が動物を適切に世話をすることができるかなどの要素を確認します。 -
倫理と透明性
DACCは、透明性と倫理的な意思決定、相互尊重、継続的な学習と協力の文化を大切にし、高い倫理基準を維持しています。
ロサンゼルス以外の類似施設
同一名称の施設
「Animal Care & Control Centre」や「Animal Care Centre」などの類似した名前の施設は存在しますが、「アニマルコントロールケアセンター」という名前の施設はロサンゼルス以外にはありません。
「アニマルコントロールケアセンター」という名称は、一般的に動物の管理や保護を行う施設を指し、アメリカ全域で使用されています。各州の法律や規制に基づいて動物保護や管理を行う組織が運営しており、その名称は組織ごとに異なります。
カリフォルニア州以外で行政が運営する動物保護施設
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コミュニティ動物対応・教育センター
The Community Animal Response & Education (CARE) Centre
(ブリティッシュ コロンビア州)フレーザーバレー地域区が運営している動物保護施設で、迷子や野良、収容された犬を一時的に保護し、ケアや里親探しを行う施設です。
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動物保護管理センター
Animal Care & Control Centre
エドモントン市、アルバータ州動物保護管理センターは、エドモントン市が運営する、野良ペットや迷子ペットを収容する場所です。
この施設は、病気や怪我、迷子になったペット、また動物虐待や遺棄の被害者に安全な避難所を提供していて、飼い主が見つかるまで、または保護団体に譲渡されるまで、これらのペットを収容し、世話をします。
まとめ
今回は、ロサンゼルス郡が運営するアニマルコントロールケアセンターについてご紹介しました。ここでは、すべての動物に対して適切なケアが施されており、援助を必要とする動物を決して拒まない姿勢がとても印象的です。
一方で、動物の苦しみを最小限にするために人道的な安楽死を選択することもあります。これは、日々すべての命と真剣に向き合っているからこその判断です。
また、過去には、馬の救助のためにヘリコプターが使用されるなど、行政が動物保護や虐待、動物による被害などの問題に本気で取り組んでいる姿勢には、動物を愛する者として尊敬の念を抱かずにはいられません。
日本にも、DACCのように動物管理のリーダーとなる組織が必要なのかもしれません。
執筆者:深田龍誠
参考記事
- https://animalcare.lacounty.gov/dacc-mission/
- https://www.weho.org/services/animal-care-and-control
- https://inumagazine.com/news/make-being-a-spectator-at-dogfights-a-felony
- https://www.animallaw.info/article/chart-state-dogfighting-laws
- https://lacountyanimals.org/
- https://animalcare.lacounty.gov/
- https://www.laanimalservices.com/pet-laws
- https://www.cityoflancasterca.org/our-city/departments-services/public-safety/contract-services-emergency-response/l-a-county-animal-care-control
- https://www.cityofindustry.org/city-hall/departments/development-services/public-safety-and-health/los-angeles-county-animal-control
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