日本でも人気!短頭種の犬たちの現実とは?イギリス視点で考える

日本でも人気!短頭種の犬たちの現実とは?イギリス視点で考える

短頭種の犬とは?文字通り「頭の短い犬」のこと。いわゆる「鼻ぺちゃ犬」として、短い鼻と平らな顔の見た目で日本でも人気の犬たちです。

しかし、この「可愛い」とされる見た目の裏では、他の犬種よりも痛みを伴う多くの病気のリスクがあること。そして、多額の治療費がかかることで家計の負担となり、手放される犬たちがいる現実を知る必要があります。

「日常生活で苦しむ可能性のある犬種を救うために私たちができることは何なのか?」

本記事では、短頭種の犬たちが抱える現実をイギリス視点からご紹介!日本にいる同じ犬種の犬たちにも当てはまることですよ。

短頭種にはどんな犬種がある?

イギリスで人気の短頭種の犬はこちら。

  • イングリッシュ・ブルドッグ
  • フレンチ・ブルドッグ
  • ボストンテリア
  • パグ
  • シーズー
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • ボクサー

など。

日本でも人気の犬種ですね!大きな子犬のような、人間の赤ちゃんのような見た目が、人々を惹きつけることは不思議ではありません。これらの犬種の他に、鼻が短いMIX犬も、健康上の問題を抱える可能性を持っています。

短頭種の特徴により犬が抱える健康上のリスクとは?

人間が、犬の「見た目」を求め、繁殖を行った結果、犬が苦しむ可能性のある問題を5つご紹介します。

呼吸の問題

短頭種以外の犬と比べて空気の通り道が狭い短頭種には、呼吸がしづらいBOAS(短頭種気道症候群)という症状がよくみられます。短頭種の犬にとって、普段の呼吸が「頑張っている」状態。いびきをかくような呼吸を「可愛い」と思っていませんか?それこそが、BOASの症状の1つなのです。

他の犬種であれば「ハァ、ハァ」と息を切らし体温を下げますが、頑張って呼吸をする短頭種にとっては難しいこと。熱中症のリスクがあるため、走り回った時や、夏の暑い時期は注意が必要です。

歯の問題

ほとんどの短頭種の犬は、品種改良により上顎が短いことが特徴の1つ。しかし、鼻の長い犬と歯の数は同じです!とても狭い範囲に歯を収める必要があるため、他の犬種に比べて虫歯や歯周病のリスクが1.25倍高いと言われています。

また、歯の問題は激しい痛みを引き起こす可能性があることに加え、心臓病など他の病気のリスクを高める可能性も。これは、特定の「見た目」を求め、何世代にもわたり繁殖された結果なのです。

目の問題

短頭種の犬は、眼球が入るくぼみが浅く、目が飛び出していることが特徴です。瞬きをしても涙が全体に広がりにくく怪我をしやすい。ドライアイや、潰瘍などを引き起こす可能性が高まります。

また、場合によっては、視力を失ったり、最終的に目を失うことも珍しくありません。

皮膚の問題

短頭種の犬たちの皮膚は、たるみやしわがある犬種が多いことが特徴です。皮膚のたるみは摩擦や湿気が溜まることにより感染症を引き起こす他、アレルギー性皮膚疾患にかかりやすいことも特徴の1つ。慢性的なかゆみや痛みに悩まされます。

日頃から皮膚を清潔に保ち、炎症がないか定期的に確認することが、飼い主に求められることです。

出産の問題

一部の短頭種には、自然分娩が難しい犬種があります。例えば、イングリッシュ・ブルドッグやフレンチ・ブルドッグは、骨盤の大きさに対して胎児の頭が大きいため難産の可能性が高く、帝王切開が一般的。イギリスでは80%以上が帝王切開での出産と言われています。

また、短頭種であることから、呼吸の問題を抱える犬も多く、その犬たちにとっての帝王切開はリスクを伴う大手術。しかし、帝王切開をしなければ母犬が出産中に命を落とす可能性が高まり、子孫を残すことが難しくなるのが現実です。

短頭種「鼻ぺちゃ犬」を救うための活動

短頭種の犬たち、いわゆる「鼻ぺちゃ犬」を救うにはどうすべきか?イギリスの動物保護団体などで行われているキャンペーンをいくつかご紹介します。

  • ブリーダーは繁殖犬に遺伝子検査を受けさせ、本当の意味での健康証明書を提供すること
  • 短頭種を飼うことを考えている飼い主は、子犬の担当獣医師に健康状態について確認すること
  • BOAS(短頭種気道症候群)の兆候がある犬を繁殖させないこと
  • 短頭種の健康改善のためのデータ集めと、理解を深めるための研究の促進
  • ドッグショーでの獣医師による健康チェック(健康上問題のある犬が受賞しないように)

すべての短頭種がBOAS(短頭種気道症候群)などの健康上の問題を抱えているわけではありません。しかし、短頭種以外の犬たちよりも、日常生活で苦しむ可能性があることは事実。それを防ぐためには、健康上の問題を抱える可能性のある犬を増やさないことが重要です。

また、動物保護団体では、健康上の問題を抱える犬種を救うため、イギリス政府に対して行動を呼びかける活動も行われています。

短頭種の繁殖を禁止すれば良い?

短頭種を禁止すれば良い!というような簡単なことではありません。「違法」となることで、避妊や去勢、安楽死させることが良いことなのか?また、不法な繁殖や輸入により、管理が行き届かない場所で健康に問題を抱える犬たちが増える懸念もあります。

事実、1991年の危険犬法により禁止された闘犬が、依然行われている過去の例から、専門家の98%が、特定の犬種を禁止リストに入れたところで、犬の数を減らす効果はないことを示唆しています。

短頭種は飛行機に乗れない!ANAとJALの取り扱いは?

短頭種の犬は、気圧や気温の変化による健康上のリスクが高く、熱中症や呼吸困難の恐れがあることから、航空会社での預かりが中止されています。日系航空会社、ANAとJALの取り扱いを見てみましょう

ANA:毎年5月1日~10月31日の夏季のみ中止

イングリッシュ・ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、シーズー、ボストン・テリア、ブル・テリア、キングチャールズ・スパニエル、チベタン・スパニエル、ブリュッセル・グリフォン、チャウチャウ、パグ、チン、ペキニーズの13種

JAL:年間を通して中止

イングリッシュ・ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグの2種

航空会社により取り扱いが異なるため、利用する航空会社に確認が必要です。

まとめ

近年、フレンチ・ブルドッグのような「デザイナー」犬が、ソーシャルメディアなどの普及により健康上の問題を理解されないまま、ますます人気が高まっているのが現状です。

短頭種の犬を迎え入れようと考えている飼い主は、「可愛い」とされる見た目や行動だけに目を向けるのではなく、健康上の配慮、そして高額な医療費がかかる可能性を考えなければなりません。

【短頭種の犬を飼う前に知っておく現実】

  • 呼吸に負担をかけないよう注意

    体重管理、運動は慎重に。特に暑い時期は体温を下げにくいため熱中症に注意が必要。

  • 目・肌・歯の状態を注意深く観察

    他の犬種より炎症を起こしやすいため日々のケアが欠かせない。

  • 信頼できる獣医師を見つける

    獣医師の助けを必要とする可能性の高い短頭種。異変を感じたら病院へ!インターネットの情報に頼るのは危険です。

執筆者:小原有加里

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