日本人に人気の海外旅行先ハワイ。その中心地ホノルルにも、動物保護施設があることをご存じですか?
オアフ島には大小100を超える保護団体がありますが、その中で最大かつ最古の団体が「Hawaiian Humane Society(ハワイアン・ヒューメイン・ソサエティ)」です。
2023年に「新世代シェルター」と呼ばれる第2キャンパスをオープンした一方で、2022年10月以降ずっと収容能力を超えた状態が続いているという現実もあります。
この記事では、施設の特徴と活動内容、そして今ハワイの保護犬・保護猫が置かれている状況をご紹介します。
Hawaiian Humane Society(ハワイアン・ヒューメイン・ソサエティ)とは?
Hawaiian Humane Societyは、1883年に設立された非営利の動物愛護団体です。140年以上にわたりオアフ島の動物たちを守ってきました。
「人と動物の絆を育み、すべての動物が思いやりをもって扱われる未来をつくる」ことを使命に、譲渡・迷子動物の返還・虐待調査・不妊去勢手術・飼い主支援など、動物福祉に関わるほぼすべての活動を1つの団体で担っています。
拠点はホノルル市内の本部(モイリイリ)と、2023年5月にオープンした西オアフの第2キャンパスの2か所。2つのキャンパスで、毎年1万頭以上の動物を受け入れています。
新世代シェルター「コササ・ファミリー・キャンパス」の特徴
2023年5月、オアフ島西部のエヴァビーチ(ホオピリ地区)に「Kosasa Family Campus(コササ・ファミリー・キャンパス)」がオープンしました。
5エーカー(東京ドームの約半分)の敷地に建てられた約2,500㎡のシェルターは、動物のストレスと感染症を最小限に抑えることを目的に設計された「新世代シェルター」です。
動物のストレスを減らす設計
- 小型犬・中型犬パビリオン:外気を取り込む換気設計で、施設内に新鮮な空気が流れる
- 複数の出入り口:犬同士が顔を合わせにくい動線で、吠え合いや興奮を防ぐ
- 猫用パティオ(キャットハウス):屋外の光と風を感じられるスペース
- 小動物パビリオン:ウサギ、チンチラ、モルモット、鳥、魚など
キャンパス内の主な施設
- 医療センター(キャンパス最大の建物。大型犬エリアも併設。不妊・去勢手術も実施)
- 2つのドッグパーク
- 迷子ペットの受け入れエリア
- 譲渡候補の動物との交流エリア
- ペットフードバンクを開催するコミュニティスペース
- ペット用品の販売コーナー(譲渡時に必要なものが揃う)
どんな活動をしているの?動物たちが家族と出会うまで
Hawaiian Humane Societyの主な活動は次の7つです。
- 譲渡(アダプション):新しい家族を見つける
- 迷子の飼い主探し:保護した動物を公開し、飼い主との再会につなげる
- 動物の受け入れ:犬・猫だけでなく、小動物や家畜まで
- 虐待調査:市民からの動物虐待の通報を調査
- 不妊・去勢手術:行き場のない動物をこれ以上増やさない
- ペットKOKUAプログラム:飼い主への支援(ペットフードバンクを含む)
- 看取り
特筆すべきは、譲渡までの期限を設けていないことです。
受け入れた動物は、健康診断・ワクチン接種・不妊去勢手術・マイクロチップ装着を受けたうえで、ぴったりの家族が見つかるまでシェルターで、あるいはフォスター(一時預かり)家庭で過ごします。
「満員」が続くハワイのシェルター|2022年から続く収容能力の危機
新しいキャンパスができたにもかかわらず、Hawaiian Humane Societyは2022年10月以降、一度も収容能力を下回ったことがありません。
2025〜2026年にかけても「満員」の状態が続き、多いときには940頭以上の動物を同時にケアしています。受け入れが譲渡のペースを上回り、一時的にポップアップケージで犬を収容せざるを得ない時期もありました。
なぜ保護される動物が減らないのか
主な原因は、飼い主の生活困難です。物価と家賃の高いハワイでは、ペットの世話を続けられなくなり手放す飼い主が後を絶ちません。また、コロナ禍で不妊去勢手術が滞った影響で、野良の子猫や子犬の数も増えています。
これはハワイに限った話ではなく、アメリカ本土の都市部でも同じ構図が起きています(サンフランシスコの動物シェルターの記事でも詳しく紹介しています)。
現時点では「スペース不足を理由にした安楽死」は避けられていますが、この状況が続けば、いつ方針を変えざるを得なくなるかわからない――それがハワイのシェルターが抱える最大の懸念です。
シェルターの犬たちを里親の元へ!私たちにできること
毎日、受け入れ可能な上限を超える動物がやってくる中で、Hawaiian Humane Societyは地域の人々に「一緒に解決してほしい」と呼びかけています。私たちにできることは、大きく5つあります。
①フォスター(一時預かり)になる
家庭で過ごすことで動物に社交性が身につき、どんな飼い主が合うかも判断しやすくなります。
特に人気なのが、成犬を最大2週間だけ預かる「Couch Crasher(カウチ・クラッシャー)」プログラム。シェルターでは、犬たちが「休暇に出かける」と表現されることもあります。
生まれたばかりの子猫を預かるフォスターには、無料のスターターキットが用意されています。
②譲渡を受ける
もっとも直接的な支援です。「シェルターを空にする(Clear the Shelters)」キャンペーンなど、譲渡を後押しするイベントも定期的に開かれています。
③ボランティアに参加する
1,700人以上のボランティアが、年間16万時間以上を動物たちのために使っています。新しい飼い主を待つ動物のお世話だけでなく、自分のペットと一緒に学校や病院を訪問するプログラムもあります。
④寄付する
お金だけでなく、ペットフードの寄付も受け付けています。ペットフードバンクは、フードを買えずにペットを手放そうとする飼い主を支え、「そもそもシェルターに来る動物を減らす」ための取り組みです。
⑤手放す前の選択肢を広める
Hawaiian Humane Societyは、ペットを手放そうとしている人に「シェルターに連れてくる以外の方法」(知人への譲渡、飼育相談、一時的な支援)を案内しています。これを広めることも、シェルターの負担を減らす立派な支援です。
まとめ
Hawaiian Humane Societyは、140年の歴史と最新鋭のシェルターを持ちながら、それでも「満員」が3年以上続いています。
その背景にあるのは、動物を捨てる人の問題だけではなく、生活が苦しくなってペットを手放さざるを得ない人が増えているという社会の問題です。
だからこそ、譲渡や寄付だけでなく、フォスターやフードバンクのように「手放さなくて済むように支える」支援が重視されています。
動物保護施設からペットを迎える余裕がなくても、できることは必ずある――ハワイのシェルターの姿は、そう教えてくれます。
執筆者:小原有加里
(2026年9月 最新の状況を反映して更新)
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参考記事