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イギリスのペットショップは子犬・子猫の販売禁止!法律の抜け穴にも迫る

イギリスのペットショップは子犬・子猫の販売禁止!法律の抜け穴にも迫る

イギリスのペットショップで、生後6ヶ月未満の犬・猫の販売が禁止されたのは2020年4月6日のこと。第三者による子犬・子猫の販売禁止の法律、いわゆる「ルーシー法」が施行されました。

パピーミル(子犬工場)の劣悪な環境から救出された繁殖犬ルーシーにちなんで名付けられたこの法律は、劣悪な子犬飼育の場、そして密輸の終焉に向けた第一歩となったのです。

しかし、法律の抜け穴を狙う悪徳業者の存在も!ルーシー法の抜け穴や現在抱える問題点、そして今後イギリスが目指すことについてもご紹介します。

ペットショップで子犬・子猫の販売が禁止された主な理由

イギリスのペットショップで、生後6ヶ月未満の子犬や子猫の販売が禁止された主な理由は、悪徳ブリーダーを排除するため。

劣悪な飼育環境に生まれた子犬たちは、すぐに母犬から引き離され、様々な場所に連れ回されるなど、生まれてすぐに混沌とした環境下におかれます。それが後々、健康上や、制御不能など行動上のトラブルを引き起こし、結果として「捨てられる」運命をたどる犬たちも多いのです。

ペットショップで子犬・子猫の販売禁止!その抜け穴とは?

イギリス国内で、第三者(ペットショップなど)が生後6ヶ月未満の子犬や子猫を販売することは禁止されたものの、イギリス国外から輸入された子犬たちの販売は禁止されていないのが現状です。

輸入される子犬は、生後15週以上でなければなりません。しかし、合法的に輸入する人がいる一方で、生後間もない子犬たちを密輸する人がいるのも事実。生後間もなく母犬から引き離し輸入することは、病気の発症や死亡のリスクを大幅に高めるのです。

そして子犬の輸入を増加させた要因のひとつが、新型コロナウイルス感染症のパンデミック。ロックダウン中の孤独を解消する手段として、新しく犬を迎え入れる人が増えました。その結果、子犬の輸入が前年比の43%も急増。

この需要の高まりは、無理な繁殖による健康や行動に問題のある犬の増加にもつながったのです。

多くの人が密輸された子犬を歓迎する事実

驚くべきことに、多くの人が「密輸された犬を飼う」と答えています。その背景として…

  • より安く、簡単に飼える
  • 子犬の過去の経歴や福祉について、誤った情報(良い情報)を与えられている
  • 劣悪な環境から子犬を助け出せると思っている
  • 隠れたリスクに気づいていない

世界最古かつ最大の動物福祉慈善団体RSPCAの調査によると、78%の人が輸入された犬・子犬は健康診断が必要だと答えています。安く迎えられる一方で、予想以上の医療費がかかる隠れたリスクに気づかない人が多いのが現状です。

イギリスで犬・猫を迎え入れる方法

イギリスで、生後6ヶ月未満の子犬や子猫を迎え入れるには、認可を受けたブリーダーもしくは動物保護団体と直接取引をすることが必要。そして、ブリーダーに義務付けられていることは、「子犬が生まれた場所で、母犬と一緒に過ごしている場面を飼い主候補に見せること」です。違反した場合は、無制限の罰金、もしくは最長6ヶ月の懲役刑が科される可能性も!

しかし、法律があるからと安心せず、子犬を迎え入れる予定の人もいくつかの点に注意しなければなりません。

【子犬を迎え入れる際の注意点】

  • 母犬が一緒にいるか?
  • 「本物の」母犬か?
  • 購入を急かされていないか?
  • 子犬が生まれたとされる部屋とは別の場所で面会を勧められていないか?

特に、母犬が不在の場合は要注意!散歩に行っている、寝ているなどの言い訳や、時には「偽物の」母犬がいることもあります。偽物の母犬は本物の母犬を恐れて子犬に近寄らないことが気づくポイントです。

「今」イギリスが抱える問題点

輸入される子犬の数が増える一方で、「捨てられる」犬の数も増えています。

RSPCAによると、2021年から2022年にかけて犬の放置数が10%増加。2023年の最初の4ヶ月間は、前年の同時期に比べて7%、2021年に比べると40%も増加しました。

その理由の1つが飼育するための金銭的・精神的な余裕がないこと。新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、生活費の高騰に加え、健康上の問題を抱えた犬たちの治療費が生活の負担になったり、犬の行動上の問題に悩まされた末、手放す飼い主もいるのが現状です。

事実、RSPCAのWebサイトの中で「Giving up a pet(ペットを手放す)」のページは、サイトの中で9番目にアクセス数が多いページであることが明らかになりました。Google検索だけで40,000回もクリックされています。2023年の最初の5ヶ月で、2022年の同時期に比べて72%もアクセス数が多い事実が、「今」のイギリスが抱える問題点の緊急性の高さを表しています。

生体販売を禁止する国イギリスのこれから

RSPCAが行うキャンペーンの1つに「子犬の輸入を中止しよう!- 子犬にはあなたが思う以上のコストがかかる」があります。このキャンペーンにはイギリス政府も耳を傾けており、政府が掲げる法案の1つは「輸入できる犬の月齢を引き上げる」こと。

現在の15週から6ヶ月に引き上げると、成犬の歯に生え変わる時期なことから取り締まりが容易になることに加え、一番可愛いとされる時期に輸入ができないため、「可愛い」が故の衝動買いを防ぐことにもつながります。

私たちにできること

健康面そして精神面が不安定な子犬が生まれる原因こそが、悪徳ブリーダーによる無理な繁殖。関わる気はなくとも、知らないうちに不幸な子犬たちが生まれる手助けをしているかもしれません。

私たちにできることは、犬たちの苦しみを止めること。そのために、犬を迎え入れる予定の人は「生まれ育った環境以外の場所で子犬に出会うことは許されない」ことの重要性を知る必要があります。

そして、遺伝的に健康上の問題を抱える犬種を選ばないことも私たちにできること。フレンチブルドッグなどの鼻ぺちゃ犬は、可愛い見た目で人気が急上昇中ですが、ひどい呼吸の問題に苦しむ可能性の高い犬種です。

苦しむ可能性のある犬の繁殖を止めることこそが、幸せな犬生をスタートさせる犬たちが増える未来へとつながっていきます。

執筆者:小原有加里

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