日本で闘犬は禁止されているのか|条例があるのは5都道県だけ、土佐闘犬のいまと海外の「観戦も犯罪」
「日本では闘犬は禁止されているのか」。土佐犬について調べると、多くの人がこの疑問にたどり着きます。
結論から書くと、日本には闘犬を全国一律で禁止する法律はありません。闘犬を条例で規制しているのは、北海道・東京都・神奈川県・石川県・福井県の5つの自治体だけです。それ以外の地域では、闘犬は「虐待にあたるかどうか」を個別に判断する扱いになっています。
一方、イギリスやアメリカ、台湾では、闘わせることはもちろん、観戦・賭け・訓練まで国の法律で禁じています。この記事では、日本の条例の中身、国の法律の扱い、高知の土佐闘犬のいま、海外の規制を、一次情報で整理します。
目次
結論|日本に闘犬を禁止する国の法律はない
先に要点をまとめます。
- 日本の法律(動物愛護管理法)には、「闘犬」を名指しで禁止する条文はありません
- 闘犬を条例で規制しているのは北海道・東京都・神奈川県・石川県・福井県の5自治体です(環境省のまとめ、2020年4月1日現在)
- このうち東京都・神奈川県・石川県・福井県は全面禁止。北海道は土佐犬以外の闘犬を禁止し、土佐犬の闘犬は公安委員会の許可制です
- それ以外の地域では、動物愛護管理法の「虐待」にあたるかどうかで判断されます
なお、闘犬の禁止と「土佐犬を飼うこと」は別の話です。日本では土佐犬の飼育そのものは禁止されておらず、許可も要りません。飼い方のルールは土佐犬は飼育禁止?日本で飼うのに許可はいる?の記事にまとめています。
闘犬を規制する5つの条例
環境省は、自治体の闘犬等取締条例を一覧で公表してきました。公表された最後の版(2020年4月1日現在)によると、内容は次のとおりです。
- 東京都(1948年7月20日施行):犬・鶏・牛などの動物を闘わせること、闘いを見せるために公衆を集めること、それを教唆・ほう助することを禁止。5万円以下の罰金または拘留・科料
- 北海道(1949年6月5日施行):土佐犬を除く犬・鶏・牛などを闘わせることを禁止。土佐犬を闘わせるには北海道公安委員会の許可が必要で、闘い方も公安委員会の定める方法に限る。10万円以下の罰金または拘留・科料
- 神奈川県(1956年10月1日施行):動物を闘わせること、観せるために公衆を集めることを禁止。拘留または科料
- 福井県(1958年10月20日施行):同様に禁止。10万円以下の罰金または拘留・科料
- 石川県(1975年7月8日施行):同様に禁止
どの条例も、対象は犬だけではありません。闘鶏や闘牛も含めて「動物同士を闘わせること」を禁じています。
条例の目的として書かれているのは、神奈川県の「粗暴又は残虐な風潮を助長するおそれ」の防止、石川県・福井県の「善良の風俗」の保持などです。いずれも制定は1940〜1970年代で、動物そのものの苦痛より、社会の風紀を守る発想から作られています。
ここに挙がっていない42府県には、闘犬を取り締まる条例はありません。
条例のない地域では|動物愛護管理法と「昭和49年の解釈」
条例がない地域で闘犬が問題になる場合、根拠になるのは動物愛護管理法です。同法第44条は、愛護動物(犬を含む)を「みだりに」殺したり傷つけたりした者を、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金に処すると定めています。
問題は「みだりに」の解釈です。2011年の環境省の審議会で、事務局は1974年(昭和49年)の疑義照会への回答を紹介しています。その趣旨は次のとおりです。
伝統行事として社会的に認容されている闘犬等は、必要な限度を超えて動物に苦痛を与えない限り、虐待に該当しない。
つまり国の法律では、闘犬は「それだけで違法」ではありません。「伝統として認められているか」「必要な限度を超えた苦痛か」を、ケースごとに判断する扱いです。
この線引きは、外から確かめにくいものです。どこで、どんなルールで、どれだけの犬が闘っているのか。けがをした犬はどう扱われているのか。国の統計は存在しません。
2011年、国の審議会で闘犬が議論された
闘犬の扱いは、2012年の動物愛護管理法改正に向けた議論の中で取り上げられました。2011年9月27日の「動物愛護管理のあり方検討小委員会」(第20回)では、事務局が実態調査の結果を報告しています。
- 全国16地域・19自治体で、18件の大会を把握(闘犬7件、闘鶏1件、闘牛10件)
- 大会の約8割にルールがあり、そのうち約8割に動物への配慮規定がある
- 9件は江戸時代以前に由来し、県の天然記念物や重要無形民俗文化財に指定されている例もある
この回では闘犬関係者からのヒアリングも予定されていましたが、関係者は来場しませんでした。
委員からは、闘犬では喉元へのかみつきが普通で出血は避けられないという指摘や、闇で行われる闘犬の存在、獣医師の立ち会いが不十分な現状を問題にする意見が出ました。一方で「何が残酷かの定義が難しい」として、禁止ではなく主催団体の明確化や獣医師立ち会いの義務化といったルール作りを求める意見もありました。
結局、2012年の改正法に闘犬を禁止する規定は入りませんでした。議論はされたものの、「禁止か、規制か」の結論は出ないまま、現在まで条例と個別判断の仕組みが続いています。
高知の土佐闘犬はいま
「土佐犬 闘犬廃止」と検索されることがあります。高知県で闘犬が法律や条例で廃止されたわけではありません。環境省のまとめで、闘犬を規制する条例を持つ自治体に高知県は入っていません。
ただ、観光として闘犬を見られる場所はなくなりました。桂浜の観光案内サイトによると、経緯は次のとおりです。
- 1964年:桂浜に民間の「土佐闘犬センター」が開業
- 2014年:「とさいぬパーク」に名称を変更。闘犬の常時公開をやめる
- 2017年5月19日:営業を終了。負債を抱えて破産手続きに入り、高知地裁から明け渡しを求められたため
現在、桂浜公園の中に土佐犬や闘犬を見学できる施設はありません。
つまり「廃止」というより、観光の場から見えなくなった、というのが実態に近い表現です。闘犬そのものが今どこで、どの程度行われているかは、公的な統計がないため分かりません。
海外の闘犬禁止|イギリス・アメリカ・台湾
海外では、闘犬を国の法律で禁止し、関わり方の範囲まで細かく定めている国があります。
イギリス(イングランド・ウェールズ)
- 1835年:動物虐待法(Cruelty to Animals Act 1835)で、闘犬や熊いじめなどが禁止される
- 2006年:動物福祉法(Animal Welfare Act 2006)第8条が、闘いを開くこと、入場料を受け取ること、宣伝すること、賭けること、闘わせる目的で犬を飼う・訓練すること、正当な理由なく観戦すること、闘いの動画を配布することまで犯罪と定める
- 2021年6月29日:動物福祉(量刑)法の施行で、闘犬への関与を含む動物虐待の最高刑が6か月から5年の拘禁刑に引き上げられる
それでも闘犬はなくなっていません。民間団体のRSPCAは、闘犬に関する通報の件数や多い地域を集計して公表し、今も続いていると警告しています。RSPCAの役割はRSPCAとは何かで紹介しています。
アメリカ
- 連邦法(動物福祉法第26条、合衆国法典7編2156条)が、動物を闘わせる催し(animal fighting venture)への出場・主催、闘わせる目的での売買・所持・訓練・輸送を禁止
- 2007年:最高刑を1年から3年に引き上げ、重罪(felony)に
- 2008年:最高刑を5年に引き上げ
- 2014年:観戦すること(最高1年)と、16歳未満の子どもを観戦させること(最高3年)を犯罪に追加
- 2018年:プエルトリコなどの海外領土にも適用を広げる改正が成立(2019年12月施行)
州の法律でも、闘犬は全50州とワシントンD.C.で重罪とされています(ASPCA、2015年時点)。
台湾
- 動物保護法第10条が、賭博・娯楽・営業・宣伝などの目的で動物同士、または人と動物を闘わせることを禁止
- 違反には5万〜25万台湾ドルの過料が科され、氏名や写真、違法の事実を公表されることもある(第27条)
台湾の動物保護の仕組みは、台湾の「殺処分ゼロ」はどうなったのかでも取り上げています。
日本との違い|「行為」を国が定義しているか
並べてみると、違いは罰則の重さだけではありません。
- 誰が決めているか:イギリス・アメリカ・台湾は国の法律。日本は一部の自治体の条例
- 何を禁じているか:海外は闘わせることに加え、観戦・賭け・訓練・宣伝・動画の配布まで。日本の条例は「闘わせること」「公衆を集めること」とその手助け
- なぜ禁じているか:海外は動物の苦痛(動物福祉)。日本の条例は「善良の風俗」や「粗暴な風潮」の防止
- 罰則:イギリスは最高5年、アメリカの連邦法も最高5年。日本の条例は10万円以下の罰金や拘留・科料
もう一つの違いは、見えるかどうかです。イギリスでは、違法であることを前提に、RSPCAが通報件数を集計し、闘犬が「どれだけ起きているか」を数字で示しています。日本では、条例のない地域で行われる闘犬について、国として数を把握する仕組みがありません。
「闘犬を見かけない」ことは、「闘犬がない」ことと同じではありません。見えないものは、良くなったのか悪くなったのかを評価できません。
まとめ
- 日本には闘犬を全国で禁止する法律はなく、条例で規制しているのは北海道・東京都・神奈川県・石川県・福井県の5自治体だけ
- 条例のない地域では、動物愛護管理法の「みだりに傷つけた」にあたるかどうかで判断される。1974年の解釈では、伝統行事として認められた闘犬は、必要な限度を超えない限り虐待にあたらないとされた
- 2011年の国の審議会で闘犬は議論されたが、2012年の法改正に禁止規定は入らなかった
- 高知・桂浜の闘犬施設は2017年に閉鎖。ただし闘犬が条例で廃止されたわけではない
- イギリス・アメリカ・台湾は国の法律で、観戦や訓練まで含めて禁止している
伝統か、虐待か。この問いは感情的な対立になりやすいテーマです。ただ、その前にできることがあります。どこで、どれだけ行われているのかを把握すること、闘った犬のけがや、その後の行き先を記録することです。
善意や反対の声だけでは、仕組みは変わりません。まず数字として見えるようにすることが、議論の出発点になります。
(2026年10月 執筆。条例の内容は環境省のまとめ(2020年4月1日現在)にもとづきます。最新の条文は各自治体の例規集でご確認ください)
参考記事
- 環境省:闘犬等取締条例の概要(令和2年4月1日現在)
- 東京都例規集:闘犬、闘鶏、闘牛等取締条例
- e-Gov法令検索:動物の愛護及び管理に関する法律
- 環境省:中央環境審議会動物愛護部会 動物愛護管理のあり方検討小委員会(第20回)議事録(2011年9月27日)
- 桂浜まるごとガイド:桂浜で土佐犬(及び闘犬)を見ることはできません
- legislation.gov.uk: Cruelty to Animals Act 1835
- legislation.gov.uk: Animal Welfare Act 2006, section 8
- GOV.UK: Maximum prison sentence for animal cruelty raised to five years(2021年)
- 7 U.S. Code § 2156 – Animal fighting venture prohibition
- 18 U.S. Code § 49 – Enforcement of animal fighting prohibitions
- ASPCA: ASPCA Urges the U.S. Sentencing Commission to #GetTough on Dog Fighting
- 全國法規資料庫:動物保護法(台湾)


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