オーストラリアの動物愛護事情|RSPCAオーストラリアの活動と収容・譲渡データ、保護を支える人々
オーストラリアは、世帯の73%がペットを飼っている世界有数の「ペット大国」です。
その一方で、家庭環境の変化や問題行動、健康上の理由などで手放される動物や、不適切な飼育・虐待から保護される動物も少なくなく、毎年多くの犬や猫がシェルターで新しい家族を待っています。
この記事では、オーストラリアのペット事情を最新の統計で日本と比べながら、国内最大の動物保護団体「RSPCAオーストラリア」の活動と、保護活動を募金やボランティアで支える人々の取り組みをご紹介します。
なお、RSPCAはもともと1824年にイギリスで生まれた団体です。本家イギリスのRSPCAの歴史と仕組みは RSPCAとは の記事で解説しています。この記事では、オーストラリアのRSPCAに絞ってお伝えします。
目次
オーストラリアのペット事情|日本との比較
オーストラリアの動物用医薬品業界団体(Animal Medicines Australia)の2025年調査によると、オーストラリアでは約770万世帯(全体の73%)が何らかのペットを飼っており、ペットの総数は約3,160万頭。人口(約2,700万人)より多くのペットがいる計算です。飼育率はコロナ禍前の2019年(61%)から大きく伸びました。
犬
最も多く飼われているペットは犬で、推定約730万頭、世帯飼育率は約49%です。つまり、2世帯に1世帯が犬と暮らしています。
日本の犬の飼育頭数は約682万頭(ペットフード協会2025年調査)とオーストラリアより少し少ないだけですが、日本は世帯数が多いため、世帯飼育率は約9%にとどまります。
猫
2番目に多いのは猫で、推定約580万頭、世帯飼育率は約34%です。
日本の猫の飼育頭数は約884万頭とオーストラリアより多いのですが、こちらも世帯飼育率にすると約9%。オーストラリアがいかに「ペットと暮らすのが当たり前」の国かがわかります。
シェルターに収容される犬猫の数|オーストラリアと日本
ペット大国のオーストラリアでも、シェルターに収容され、安楽死という最期を迎える犬猫は少なくありません。
RSPCAオーストラリアの2023〜24年度の統計によると、全国のRSPCA施設に収容された犬は17,468頭、猫は26,704頭でした。
そのうち多くは新しい家族のもとへ行くか、元の飼い主に返還されましたが、犬2,842頭、猫5,148頭が安楽死となっています。
ただし、オーストラリアで安楽死の対象になるのは、原則として治療の難しい健康上の問題がある場合か、トレーニングでは改善できない深刻な問題行動(攻撃性など)がある場合に限られます。犬の安楽死のうち約3分の2は「行動上の理由」で、「スペースがないから」という理由の安楽死はありません。
収容数は年々減っており、5年前(2019〜20年度)と比べると犬は約38%減、猫は約41%減。安楽死の数もそれぞれ約18%減、約47%減となっています。
日本の場合
環境省の統計によると、日本で2024年度(令和6年度)に自治体に引き取られた犬は17,399頭、猫は22,010頭。そのうち殺処分となった犬は1,964頭、猫は4,866頭でした。
殺処分数は統計開始以来の最少を更新し続けており、多くの動物保護団体の尽力によって着実に減っています。それでも「殺処分ゼロ」への道のりはまだ続いています。
RSPCAオーストラリアとは
オーストラリアには、動物の命や暮らしを守るための動物保護団体が1,000以上あります。なかでもオーストラリア全土で活動し、国内で最もよく知られているのがRSPCAオーストラリアです。
RSPCAは「Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals(王立動物虐待防止協会)」の略です。オーストラリアでは1871年に馬の福祉を話し合う最初の会合が開かれ、その後各州で動物保護団体が設立されました。1980年代初めには、各州の団体をまとめる全国組織として、イギリスのRSPCAにちなんだRSPCAオーストラリアが生まれました。名前は同じですが、イギリスのRSPCAとは独立して運営されている別の団体です。
RSPCAオーストラリアは慈善団体でありながら、各州の法律にもとづいて動物虐待の調査・起訴を行う法的権限を持っている点が大きな特徴です。2023〜24年度には全国で約71,500件の虐待通報を調査し、248件を起訴しています。
RSPCAオーストラリアの活動
1. 虐待の通報受付と調査・法的措置
残念ながら、動物虐待はオーストラリアでも起きています。また、飼い主が不適切な飼い方だと気づかないまま、動物にとってつらい環境で飼育しているケースも少なくありません。
ペットを飼う世帯がこれだけ多い国で、RSPCAだけですべての飼育状況を確かめることはできません。そこで、虐待が疑われる動物を見かけた一般市民や獣医師が通報できる窓口(コールセンター)を設けています。身近な人からの通報が、劣悪な環境で暮らす動物の早期発見につながっています。
通報を受けると、RSPCAの調査官(インスペクター)が飼育場所を訪問し、飼育状態や家庭環境を確認します。調査官は州の動物福祉法にもとづく権限を持ち、飼い主の許可がなくても飼育場所を訪問・調査することができます。
不適切な飼育が認められ、改善が見込める場合は、正しい飼育法や治療の必要性を指導し、一定期間後に再調査。改善されていなければ動物を保護し、飼い主には罰金の請求や動物福祉法にもとづく起訴などの法的措置がとられます。
2. 保護した動物の飼育・治療・トレーニング
保護された動物や、飼い主が飼えなくなって引き取った動物は、新しい飼い主が決まるまでRSPCAのシェルターで暮らします。対象は犬猫だけでなく、鳥、魚、フェレット、ウサギ、モルモット、馬、牛、ヤギ、羊、カメやヘビなどの爬虫類まで多岐にわたります。
シェルターでは、動物の種類や大きさに応じた広さのケージで、清掃や栄養の管理が行われます。犬はボランティアによる散歩が毎日の予定に組み込まれています。
施設には動物病院が併設されているところもあり、虐待によるけがや病気、栄養失調などを抱えた動物は、必要に応じて治療やリハビリを受けます。
誤った飼い方やしつけ、虐待の経験などから問題行動のある動物には、譲渡に向けて行動改善のトレーニングが行われます。段階的に進めるため、長い期間がかかる動物もいます。
3. 譲渡(里親探し)
保護された動物はヘルスチェックを受け、性格や問題行動などペットとしての適性が評価されます。適性ありと判断された動物は譲渡リストに登録され、オンラインやシェルターでの見学、譲渡会などを通じて新しい家族を募集します。
希望者があればシェルターで面談を実施。動物の性格・これまでの生活環境・健康状態が開示され、希望者の生活環境との相性を見て、新しい飼い主として適切かどうかが判断されます。
4. フォスターケア(一時預かり)
シェルターの数には限りがあるため、収容しきれない動物や、人に慣らす必要がある動物は、「フォスターケア」という仕組みでボランティアの一般家庭に一時的に預けられます。
預かる期間は1〜2週間程度の短期から、長いと数年に及ぶこともあります。家庭で人と暮らす経験を積むことは、新しい飼い主との関係づくりの準備にもなります。
5. 動物に関する情報提供
動物と飼い主が快適に暮らせるよう、各動物の健康管理や飼育法、飼い主が抱きがちな疑問への答えを、動物ごとにかなり詳しくウェブサイトで公開しています。
犬のトレーニングについては、RSPCA認定のドッグトレーナーやトレーニング教室を紹介し、問題行動の軽減に努めています。
ウェブサイトで提供している情報の例
- 同居している猫がほかの猫に攻撃的なときの対処法
- 子犬のトイレトレーニング法
- 犬・猫・鳥・ウサギなどのコンパニオンアニマルを飼うことで人が得られるメリット
6. 負傷した野生動物の保護と治療
オーストラリアでは、野生の鳥や動物が交通事故などで負傷することが多く、近くの動物病院やRSPCA、各地域の動物保護団体が保護して、必要に応じて治療やリハビリを行っています。
7. 動物に関する統計の公表
RSPCAオーストラリアは、収容した動物の数や譲渡・安楽死の状況、虐待通報の件数などを毎年集計し、報告書として公開しています。この記事で紹介した数字も、その報告書によるものです。
保護活動を支える人々|募金・スポンサー・イベント・ボランティア
オーストラリアの動物保護団体の多くは慈善団体で、国民や地域コミュニティ、企業などからの支援で活動しています。ここでは、どのような形で支援が行われているのかを見ていきます。
募金
募金箱の設置
主要なスーパーマーケットやペットショップなど、いろいろな場所に募金箱が設けられ、いつでもだれでも簡単に募金することができます。
インターネットで
各動物保護団体のウェブサイトでは、ネット上で簡単に募金することができます。2ドル程度の少額から受け付けている団体もあり、毎月50ドルや100ドルなど、一定金額を定期的に寄付できる仕組みを導入している団体もあります。
寄付した額は、税金の控除対象になります。
リサイクルでも
西オーストラリア州のRSPCAでは、ビンやペットボトル、アルミ缶などをリサイクルする際、その返金額を寄付できる仕組みを導入しています。動物を助けるために何かをしたい子どもや、大きな寄付が難しい家庭でも、保護活動に参加できるようにするための仕組みです。
遺産の寄付
遺産の一部、またはほとんどを動物保護団体に寄付したい人は、生前にその手続きをしておくことができます。
スポンサー・サポーター
大きな動物保護団体では、多くの企業や団体がスポンサーやサポーターとなり、保護活動を支援しています。企業にとっては、全国規模のイベントやメディアを通じて、社会貢献に取り組む姿勢を伝えられる点がメリットの一つです。
RSPCAオーストラリアの主なスポンサー・サポーターには、ペットフード会社のロイヤルカナン、動物用医薬品会社のエランコ、全国にフランチャイズを持つペットショップなど動物関連の会社のほか、銀行や映画館なども名を連ねています(2023年時点)。
テレビ番組
RSPCAオーストラリアの活動は、テレビ番組「RSPCAアニマルレスキュー」でも広く知られるようになりました。2007年から2012年まで放送された番組で、その後も再放送されています。
不適切な飼育や虐待が疑われる家をRSPCAの調査官が訪問し、必要に応じて動物を保護するまでの過程を記録したドキュメンタリーです。虐待と判断された飼い主に多額の罰金が科されることもあり、動物虐待の罪の重さを視聴者に伝える役割も果たしました。
イベント
各動物保護団体は各地でイベントを開き、その収益や集まった募金を活動費に充てています。RSPCAオーストラリアでは、「ミリオン・ポーズ・ウォーク」と「カップケーキ・デー」という全国規模のイベントを毎年開催しています。
ミリオン・ポーズ・ウォーク(Million Paws Walk)
毎年5月の日曜日に各地で開かれるイベントです。2023年は全国36カ所の会場で、参加登録した犬と飼い主が、ほぼ同じ時間帯に2kmまたは4kmのウォーキングを一斉に行いました。
会場には犬に関連する出店が並び、ウォーキングの前後にも家族や友人とドッグイベントを楽しむことができます。
カップケーキ・デー(Cupcake Day)
カップケーキなどのスイーツを作って販売し、その収益を寄付するイベントです。開催期間中(2023年は8月の1カ月間)の都合の良い日に、自宅や学校、職場など好きな場所で、家族や友人同士など少人数でも実施できます。
ボランティア
多くの動物保護団体の活動を支えているのは、たくさんのボランティアです。
たとえば、クイーンズランド州のRSPCAでは、有給の職員約470人に対し、約2,000人のボランティアが保護された動物たちを支えています。西オーストラリア州で活動する別の動物保護団体SAFE(Saving Animals from Euthanasia Inc.)にも、およそ2,100人のボランティアが登録しています(いずれも2023年時点の各団体の公表値)。
全国の統計はありませんが、こうした数字から考えると、オーストラリアの動物保護団体で活動するボランティアは数万人規模にのぼると推測されます。
ボランティアに登録できる年齢は団体や州によって異なり、16歳以上とするところが多く、18歳以上とする団体もあります。活動は週1日以上、1日数時間から6時間程度など、本人の希望に合わせてシフトが組まれます。
ボランティアの主な仕事には、次のようなものがあります。
- シェルターに収容された動物の世話
- 譲渡に関わる事務作業
- 募金活動
- イベントスタッフ
- 動物の正しい飼い方などについての、飼い主への指導や教育活動
- フォスターケア(上記の一時預かり)
このように、オーストラリアでは多くの人が直接・間接に動物保護に関われる仕組みが整っています。
まとめ
オーストラリアでは、RSPCAオーストラリアをはじめとする多くの動物保護団体が、虐待の調査から保護・治療・トレーニング・譲渡までを担っています。その活動を、募金やスポンサー、イベント参加、ボランティアやフォスターケアラーとして、多くの人々が支えています。
「世帯の7割がペットを飼う国」でも、収容される動物をゼロにはできていません。しかし、収容数と安楽死数が5年間で大きく減っているのも事実です。日本の殺処分数も過去最少を更新し続けており、両国とも確実に前へ進んでいます。
参考ウェブサイト
- RSPCAオーストラリア
- RSPCA Australia: Annual statistics(2023-2024)
- Animal Medicines Australia: Pets in Australia 2025
- 一般社団法人ペットフード協会:全国犬猫飼育実態調査
- 環境省:犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況
- SAFE(Saving Animals from Euthanasia Inc.)
- Pet Rescue
執筆者:ルール久枝、Mahogany_socks
(2026年10月 統合・更新。旧記事『オーストラリアのRSPCAは何をしている団体?』『オーストラリアの動物愛護事情 ~動物保護を支える人々~』の内容を統合しました)


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